カーボンオフセットの考え方
カーボンオフセットの考え方

カーボンオフセットとは、環境問題に付随する用語です。

カーボンニュートラルを目指すことが世界の主流になり、ニュースなどで耳にする機会も増えている言葉です。

このページでは、カーボンオフセットの考え方や取り組みについて詳しく解説しています。

カーボンオフセットとは

カーボンオフセットについて、環境省のホームページで次のように記載されています。

カーボンオフセットとは、日常生活や経済活動において避けることができないCO2等の温室効果ガスの排出について、まずできるだけ排出量が減るよう削減努力を行い、どうしても排出される温室効果ガスについて、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え方です。

環境省より
カーボンオフセット
  • 二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量をできるだけ減らすよう努力しましょう。
  • どうしても排出されてしまう温室効果ガスを、削減活動により埋め合わせしましょう。
要約すると、このような考え方を総称して「カーボンオフセット」と呼んでいます。

カーボンオフセット(carbon offset)は、

  • carbon=炭素
  • offset=相殺

という意味を持ちます。

つまり炭素(二酸化炭素などの温室効果ガス)をゼロにしましょうという活動の合言葉のような形で捉えられている用語です。

カーボンオフセットの取り組み

カーボンオフセットという言葉は、広い意味を持っています。

国家や自治体規模での取り組み、企業など団体の取り組み、さらには個人で気軽に取り組むことができる手段までカーボンオフセットの活動に含まれるのです。

カーボンオフセットの主な取り組みについて、環境省では大きく5つに分けています。

オフセット製品・サービス

製品を製造、販売する者やサービスを提供する者などが、製品やサービスのライフサイクルを通じて排出される温室効果ガス排出量を埋め合わせる取組。

  • 製造に伴う排出をオフセットした衣服の販売
  • 印刷時の電力消費に伴う排出をオフセットしたプリンタの販売
  • 発電時のエネルギー消費に伴う排出をオフセットした電力の販売

会議・イベントのオフセット

コンサートやスポーツ大会、国際会議等のイベントの主催者等が、その開催に伴って排出される温室効果ガス排出量を埋め合わせる取組。

  • 会場内の消費電力に伴う排出をオフセットしたチャリティーライブの開催
  • 会場運営及び出席者の移動・宿泊に伴う排出をオフセットした国際会議の実施

自己活動オフセット

自らの活動、例えば組織の事業活動に伴って排出される温室効果ガス排出量を埋め合わせる取組。

  • 自社の事業活動に伴う排出をオフセットし、自社の CSR レポートで公開
  • 自社事業での消費電力に伴う排出を再エネクレジットでオフセットし、環境取組を推進するイニシアティブに報告

クレジット付製品・サービス

製品を製造/販売する者、サービスを提供する者又はイベントの主催者等が、製品・サービスやチケット(以下、「製品・サービス等」という。)にクレジットを付し、製品・サービスの購入者やイベントの来場者等の日常生活に伴う温室効果ガス排出量の埋め合わせを支援する取組。

  • 購入者の日常生活に伴う排出をオフセットする量のクレジットを添付した家具の販売
  • 来場者の日常生活に伴う排出をオフセットする量のクレジットを添付したライブチケットの販売

寄付型オフセット

製品を製造・販売する者、サービスを提供する者又はイベントの主催者等が、製品・サービス等の消費者に対し、クレジットの活用による地球温暖化防止活動への貢献・資金提供等を目的として参加者を募り、クレジットを購入・無効化する取組です。

例えば、販売時にその売り上げの一部をクレジット購入に用いることを宣言するとともに、一定量の金額が集まってからクレジットを購入・無効化することや、キャンペーンへのアクセス数に応じてクレジットを購入・無効化するなど、消費者とコミュニケーションを取りつつ、クレジットを活用する多様な取組形態が考えられます。

  • 販売額の一部をクレジット購入に用いるスポーツウェアの販売
  • 来場者 1 人につき 1kg-CO2 の森林クレジットを購入し、森林保全に寄与する環境保護イベントの開催

カーボンオフセットへの取り組み

カーボンオフセットの活動は、決して大きな組織だけが取り組むものではありません。

個人の方一人一人が意識を変えることにより、一般生活の中で気軽に貢献ができるのです。

カーボンオフセットの取り組み方法

それではカーボンオフセットに取り組む際、どのように考えれば良いのでしょうか。

環境省では、次のように紹介しています。

カーボンオフセットに取り組む手順
  1. 知る:温室効果ガス(二酸化炭素など)排出量を算定する。
  2. 減らす:二酸化炭素の削減努力の実施。
  3. オフセット:削減できない二酸化炭素を、削減・吸収する取り組みに資金を提供することでオフセット(埋め合わせ)する。

手順としては、決して難しくはありません。

①温室効果ガスの排出量を知る

まずは自社や自身が二酸化炭素をどれくらい排出しているのか知ることからはじめます。

自然に発生する二酸化炭素は除外
二酸化炭素は、生物が呼吸する上で必ず排出してしまうものです。
カーボンオフセットの考え方としては、「自らの活動に伴い排出する二酸化炭素等の温室効果ガスを認識・削減~」としていますので、「呼吸など自然に排出される二酸化炭素は、カーボンオフセットの考えからは除外される」と解釈できます。

つまり私たちが「活動することに伴う排出」が対象です。例を挙げると

  • 電気を付ける
  • 暖房や冷房を使う
  • 自動車を使う

このような「活動から排出される二酸化炭素」を把握することからカーボンオフセットをはじめます。

企業が自社の二酸化炭素排出量を正確に把握するには、しっかりと分析する必要があります。

個人であれば、排出量を正確に計算するのが難しくても、なるべく排出しないように心掛ける生活はすぐにできるでしょう。

最近では、大阪府などの自治体や電力・ガス会社の一部で、個人がウェブサイトやアプリなどを使用して排出された二酸化炭素の量を算出できるサービスがはじめられています。

②温室効果ガスの排出量を削減する

次に排出する温室効果ガスをなるべく少なくする取り組みをはじめます。

個人では、節電や節ガスなどエネルギーをなるべく使用しないよう心掛けることが最も簡単にできることでしょう。

また企業でも個人においても、省エネ性能を備えた機器を導入することも削減活動の一環です。

③削減しきれない二酸化炭素の埋め合わせをする

どんなに削減活動に取り組んだとしても、人間が社会生活を営む上で温室効果ガスは必ず発生してしまうものです。

カーボンオフセットの取り組みには、温室効果ガスの吸収量を増やす活動が必須です。

一般的な考えとしては、個人でも企業であっても直接的に吸収量を増やすことは困難でしょう。

直接的に温室効果ガスの吸収量を増やすためには、植林や森林保護などの活動が必要です。一個人や一企業がこのような取り組みをするのは簡単ではありません。

寄付やカーボンクレジットの購入
オフセットの活動としては、クレジットを購入することや寄付が一般的です。このような活動であれば、一個人であったとしても気軽に取り組むことが可能です。
企業間では、カーボンクレジット購入によるオフセットが広まりつつあります。

なぜカーボンオフセットに取り組むのか

昨今、なぜカーボンオフセットの取り組みが盛んになっているのか。ご存知の方が多いかもしれませんが、これは地球温暖化対策の一環です。

地球の平均気温は、100年前と比べて約1.1℃上昇しているというデータが示されています。

世界では、海面上昇など温暖化の影響による様々な気象災害が発生しています。日本国内でも記録的豪雨や猛暑などの異常気象が多発しています。

カーボンニュートラルが世界共通目標に
このままの状態が続いた場合、生物の生存基盤を脅かす問題に発展する懸念から、環境問題への取り組みが2000年以降から活発になりました。
2015年にはパリ協定が採択され、世界の共通認識として環境問題に取り組む指標が示されました。
日本でも2020年に政府が「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」カーボンニュートラルを目標とすることが宣言されています。

カーボンオフセットの取り組みは、今後さらに活発化していくでしょう。

カーボンオフセットとカーボンニュートラルの違い

カーボンオフセットとカーボンニュートラルという言葉は、名称も似ていますが意味合いとしてもほぼ同じです。

排出される温室効果ガスと同量を吸収(相殺、中和)して、実質ゼロにしましょうという意味は共通しています。

カーボンオフセットとカーボンニュートラル
  • カーボンニュートラルは、排出量と吸収量が同じである「状態」を指します。
  • カーボンオフセットは、カーボンニュートラルを目指す考え方や取り組みを指しています。
カーボンニュートラルの解説

環境活動に付随するLPガス用語で、「カーボンニュートラルLPガス」と「カーボンオフセットLPガス」があります。

カーボンオフセットの問題点

カーボンオフセットの問題点
カーボンオフセットを疑問視する見方もある

ここまでカーボンオフセットが環境問題に取り組む活動であることを記載しました。

温室効果ガスの削減は、地球上の生物にとって非常に重要なのは間違いありませんが、同時に問題点が指摘されているのも事実です。

カーボンオフセットの活動について、代表的な指摘が「カーボンオフセットが必ずしも温室効果ガスの削減につながっていない」というものです。

これは、2007年にイギリスの下院環境監査委員会報告書で提示されました。

カーボンオフセットは無意味?
資料を見ると、カーボンオフセットについていくつかの問題点が指摘されています。
最も重要なものとしては、「カーボンニュートラルを達成したと発表した企業の温室効果ガス排出量を比べたところ、実際には増加していた」という部分です。

カーボンオフセットという活動は、

  1. 排出している温室効果ガスの量を知り
  2. できる限り温室効果ガスの排出量を減らし
  3. どうしても削減できない温室効果ガスの排出量を相殺する

という作業です。

この資料では、②の部分が実行されていないと指摘されています。
③のオフセットする行為が免罪符となり、②のできる限り排出量を削減するという行為を怠っているのではないかという内容です。

その他にも、温室効果ガスの排出量の算定方法が事業者によって異なることが指摘されています。

永続性に関する指摘
またイギリスのロックバンド「コールドプレイ」のカーボンオフセット活動についても、インドでの植林プロジェクトの樹木の40%が枯死してしまったという指摘がなされています。

環境効果は視認できない

こうした環境問題に関する情報の多くは、私たちが実際に見て確認することができないものです。

私たちは、二酸化炭素を目で見ることはできませんし、実際に自身が購入したクレジットの植林活動が間違いなく吸収量増加に貢献しているのかを見ることは困難です。

信頼できる情報なのか
一般生活を送る個人としては、発信されている情報が信頼に足るかどうかの判断が重要です。
日本国内においても、排出権取引などに関する詐欺事件が発生した事例があり注意喚起がなされています。

これはカーボンオフセットに限らず、多くの環境問題に関して共通している事項です。

自身で効果を確認できない
私たちは、実際に自分が排出する二酸化炭素の量が減っているかどうかを確認することはできません。
従って一般的には使用している機器の性能などを信じるしかないのです。

また樹木により二酸化炭素が吸収されることは事実ですが、その吸収量はそれぞれの木によって異なります。どんな方法を用いたとしても、100%正確に吸収量を測定することは不可能でしょう。

信じるに足る情報
カーボンオフセットの活動においてまず重要なのは、統一したルールを決めることだと考えられます。
それに加えて、透明性と信頼性を確保することが極めて重要であるといえるでしょう。

様々な国家や民族が多様な言語で取り組むことですので、一つにまとめ上げることは決して簡単ではありません。

カーボンクレジットの取り組みは非常に意義のある活動ですが、このような問題を解決しつつ進めることが求められています。