カーボンニュートラルLPガス
カーボンニュートラルLPガスの基本図式

カーボンニュートラルLPガスは、2020年に日本政府がカーボンニュートラルを目指すと宣言して以降に誕生した、新しいサービスです。

今後、LPガス業界が脱炭素社会を目指す上で、重要な役割を果たすことになるでしょう。

このページでは、カーボンニュートラルLPガスについて解説しています。

カーボンニュートラルLPガスとは

カーボンニュートラルLPガスの解説
二酸化炭素が実質的に発生していないプロパンガス

カーボンニュートラルLPガスとは、原料の採掘から各供給地点でガスが燃焼するまで、すべての過程において発生した二酸化炭素の排出量を「実質ゼロ」にしたLPガスを指しています。

簡単に言うと、二酸化炭素を実質的に一切排出していないLPガスを、カーボンニュートラルLPガスと呼んでいます。

カーボンニュートラルLPガスは、頭文字を略して「CNLPG」や「カーボンニュートラルLPG」と表記されることもあります。

カーボンニュートラルLPガスの仕組み

CNLPGの仕組み
一般的にはカーボンクレジットを購入して相殺する

LPガスは、「プロパン」と「ブタン」を主成分としています。そのため一般的には「プロパンガス」の名称でも浸透しています。

詳しくは「プロパンガスとは」のページで解説していますが、プロパンやブタンは、原油を精製する際に生まれる副産物です。これらは、サウジアラビアなどの海外から輸入されています。

カーボンニュートラルLPガスは、海外で原油(プロパンやブタン)が採掘される段階からLPG船で日本へ輸送、さらに国内での輸送から各供給場所で燃焼する際に発生する温室効果ガスをすべて相殺することになります。
温室効果ガスの排出量を計算し、同量を相殺する
まずは、すべての過程で発生する温室効果ガスを計算し、排出される合計量を把握することから始められます。
排出される温室効果ガスの量を把握した上で、次にそれを相殺する活動を行います。

相殺はカーボンクレジットを使用

温室効果ガスの相殺には、基本的にカーボンクレジットが使用されます。

カーボンクレジットとは、「温室効果ガスの排出量を削減する、または吸収量を増加する効果」をクレジット化したものを指します。

カーボンクレジット
  • 再生可能エネルギーの導入により、二酸化炭素排出量を削減する
  • 森林の保全活動や植林活動を行う
例えばこのような行動により、温室効果ガス排出量を削減または吸収量を増加したものが権利として商品化されているのです。

一般的にガス事業者が、自社でこのような活動をするのは難しい、またはできたとしても限界があります。

ガス事業者は通常、自社の事務所などで削減努力を行いつつ、ほとんどの場合にはカーボンクレジットを購入しています。

実際にガス会社のスタッフが植林活動などを行うのではなく、カーボンクレジットという「二酸化炭素を吸収している権利」を買っているのです。

つまり排出される温室効果ガスと同量のカーボンクレジットを購入することにより、カーボンニュートラルLPガスという商品を完成させています。

大企業にしかできない

CNLPGは大手企業から仕入れることが多い
一般的にはCNLPGは完成品を仕入れることが多い

カーボンニュートラルLPガスという商品を生み出すのは、基本的には大規模な事業者でしか実現することは難しくなっています。

様々な作業が必要
例えば温室効果ガスの排出量を把握するだけでも、中小企業が簡単にできることではありません。
さらにカーボンクレジットを購入するためには、国などの機関に申請する必要があり、様々な手続きが必要になるのです。
このような活動を中小のプロパンガス事業者が行うのは難しいでしょう。

一般的に中小のガス事業者は、完成された「カーボンニュートラルLPガスという商品」を、卸元から購入しています。大企業でも他社から卸供給を受けている事業者は多数あります。

CNLPガス=LPガス(中身は同じ)

CNLPGとLPGは成分が同じ
カーボンニュートラルLPガスと通常のLPガスの成分は同じ

カーボンニュートラルLPガスと一般のLPガスの違いは、二酸化炭素を実質ゼロにしているかどうかです。

その他の点については基本的に同じですので、ガスを使うにあたり顧客側に使い勝手に違いが生じることはありません。もちろん、給湯器やコンロなどのガス機器もそのまま使うことができます。

従ってカーボンニュートラルLPガスは、顧客としては導入しやすいという利点があります。

カーボンニュートラルLPガスのメリット

カーボンニュートラルLPガスのメリット
対外的な意味合いが強い

カーボンニュートラルLPガスは、一般のLPガスと商品の質は同じです。従って消費者としては、カーボンニュートラルLPガスを導入する直接的なメリットはありません。

ただ何の意味もないのではなく、「カーボンニュートラルLPガスを使用している」という事実や効果を得ることができます。

CNLPGを使用する消費者のメリット
例えば「当社の事務所では、カーボンニュートラルLPガスを導入し、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにしています。」のように環境問題に取り組んでいる企業として対外的に宣伝することができます。
また使用する企業がカーボンニュートラルを目指す活動をしているのであれば、自社がガスを消費することによる温室効果ガスの排出量を実質ゼロとして計算することができます。

一方で供給する企業側としても、同じような効果を得ることができます。

環境問題が重要とされている昨今では、「当社は、カーボンニュートラルLPガスを販売する企業です。」とアピールする効果は大きいでしょう。

ただ、そもそもLPガスは性質上、使用する段階で必ず二酸化炭素を排出してしまう商品です。

たとえ宣伝効果がなかったとしても、政府がカーボンニュートラルを目指すと宣言している以上、ガス会社にも取り組むことが求められる状況になっています。

カーボンニュートラルLPガスのデメリット

CNLPGは料金が高い
現在のCNLPGは法人向け販売がメイン

カーボンニュートラルLPガスは、カーボンクレジットを購入して相殺するものですので、購入費用がかかります。

費用面が、カーボンニュートラルLPガスを導入するにあたり、最大のネックになっています。

カーボンクレジット分が割高に
ガス会社としては、同じ商品を販売するにも関わらず、必要経費がより多くなってしまいます。そうなると顧客へ供給するガス料金も上げざるを得ないことになってしまうのです。
カーボンニュートラルLPガスは、一般のLPガスと比べて料金が割高であるのが現状です。

ただプロパンガス料金は、法律により規制されていない自由料金制です。

現在の料金設定額が物件により異なるので、CNLPGを導入した際の金額差については、お宅により異なります。もしかすると一般のLPガスと同じ価格帯で使用することができるかもしれません。

また脱炭素社会を目指すにあたり、国からも様々な支援策が講じられています。

今後、一般家庭でのカーボンニュートラルLPガス普及を目指すにあたり、何らかの支援策が講じられる可能性はあるでしょう。

カーボンオフセットLPガス

環境問題に即したプロパンガス商品は、カーボンニュートラルLPガスだけではありません。

その他に、カーボンオフセットLPガスがあります。

カーボンオフセットLPガス
カーボンオフセットLPガスは、「供給場所でガスが燃焼する際に発生する二酸化炭素の排出量」を実質ゼロにするLPガスを指しています。
カーボンニュートラルLPガスと比べると、実質ゼロにする範囲が違います。

カーボンオフセットLPガスは、オフセット対象となる範囲が狭いため、必要な費用も少ないという特徴があります。そのため比較的導入しやすいという利点を生かして、多くの企業で採用が開始されています。

両社の違いについては、CNLPGとCOLPGの違いで解説しています。