一週間ルール

プロパンガス会社を変更したことがある方でしたらご存知かもしれませんが、ガス会社を切り替える際、「申込書の記入」(旧事業者への解約通知)から「工事施工」(ボンベ・マイコンメーターの撤去と設置)まで、原則として7日間の日にちを空けることがルールとして事業者に義務付けられています。

この決まりを業界内では、通称「一週間ルール」と呼んでいます。

一週間ルールとは

プロパンガス業界の保安や適正化について定めている「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」(通称:液化石油ガス法または液石法)では、このように定めています。

新たに一般消費者等に対し液化石油ガスを供給する場合において、当該一般消費者等に液化石油ガスを供給する他の液化石油ガス販売事業者の所有する供給設備が既に設置されるときには、一般消費者等から当該消費者石油ガス販売事業者に対して液化石油ガス販売契約の解除の申し出があってから相当期間が経過するまでは、当該供給設備を撤去しないこと。

ただし、当該供給設備を撤去することについて当該液化石油ガス販売事業者の同意を得ているときは、この限りでない。

<液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則の運用及び解釈の基準について>

相当期間については、供給設備を所有する液化石油ガス販売事業者の業務状況や一般消費者等との間の液化石油ガス料金等の精算手続きのために必要な期間等を総合的に勘案して判断するものとし、原則として一週間を基準とする。

<液石法施行規則第16条15の2号>

法律の条文なのでわかりづらいかもしれませんが、要約すると

  • プロパンガス会社が新たに供給開始する際、供給場所に他のガス会社の設備(ボンベやメーターなど)が設置してある場合には、切り替える旨を通知をした後に相当期間を設けなければ切り替えてはいけない。
  • 相当期間は、原則として一週間とする。
  • ただし、旧事業者側の同意を得ている場合には、一週間空けなくても良い。

ということです。

例えば消費者が「今の会社を早く変更したいので、明日ボンベ交換して欲しい」という要望があったとしても、旧事業者の同意を得られた場合を除きできないのです。


逆に新事業者(切り替え先のガス会社)の方で「お客様の気が変わらないように、明日ボンベ交換を完了させてしまおう」ということも原則としてできません。

特別な事情がない限り、旧事業者が「一週間空けなくても、切り替えて良いですよ。」と同意することはありません。従って、基本的には「一週間空けなければ、プロパンガス会社の切り替えはできない。」という認識で構わないでしょう。

上記は、新しく供給を開始する新事業者に対する規制内容です。

新事業者に対してのみではなく、顧客を失う側の旧事業者に対しても、以下のように定めています。

一般消費者等から液化石油ガス販売契約の解除の申し出があった場合において、当該一般消費者等から要求があった場合には、液化石油ガス販売事業者はその所有する供給設備を遅滞なく撤去すること。

ただし、撤去が著しく困難である場合その他正当な事由があると認められる場合は、この限りでない。

<液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則の運用及び解釈の基準について>

第16号中「遅滞なく」とは、・・・具体的には、当該販売事業者は原則として一週間以内にその所有する供給設備を撤去すべきである。

<液石法施行規則第16条第16号>

解約の通知を受けた旧事業者は、通知を受けてから一週間以内にボンベやメーターを撤去しなければならないのです。

多くのケースでは、新事業者は申し込みの際に消費者から「委任状」を取得します。委任状を取得することにより、「旧事業者への解約通知」や「ボンベ・メーターの撤去、返却作業」などガス会社切り替えに関する作業一式を新事業者が代行できるようになります。

従って「新しいボンベ・メーターの設置」と「古いボンベ・メーターの撤去と返却」を新事業者が同時に行うことになるのです。

つまり、新事業者が「申込書と委任状を取得し、旧事業者への解約通知」を行った日から、「ボンベ・メーターの撤去と設置」するまでの日にちを、7日空ければ良いということになります。

例えば月曜日に解約通知を行ったとしたら、最短の切り替え日は、翌週の火曜日ということになるのです。

一週間ルールは、見方としては消費者保護、そして新旧事業者による悪質な行為を防ぐために設けられている制度です。

制度としては、2001年の液石法の省令改正によって定められました。

一週間ルールが生まれた経緯

この省令改正が施行される前まで、特に首都圏を中心として悪質な事業者や訪問営業を行うブローカー等による不法行為が横行していました。

悪質な営業方法の例

  • 新事業者(契約を獲得した側)が、旧事業者(契約を失う側)に無断で設備撤去が行われる。
    「契約書をもらった翌日に設備撤去を行う」など、消費者に契約が間違いないかどうか、考える猶予を与えないで撤去や設置を完了させてしまう行為。
  • 旧事業者が、消費者からの解約の申し出に応じない。または、設備撤去を意図的に遅らせる。
    わざと設備撤去を遅らせることによって、消費者にストレスを感じさせるなどした上で、引き止めを執拗に行うなどの行為。消費者が「こんなに面倒なら、今のままでも良いか」という心理状態になることを狙ったもの。
  • 消費者が知らないうちに、情報が転売されたり、設備設置が行われてしまう。

法律による明確なルール決めがなされていなかったため、特に敵対関係にある事業者間での乗り換えに関しては、このようなトラブルが頻発していました。


ライフラインを担うガスサービスとしては、消費者が安心・安全に使用することができる環境を整えることが必須であり、省令改正はむしろ遅かったとも取ることができるでしょう。

またトラブルが頻発した要因として、特に2000年前後から関東圏内で、事業者間の顧客争奪が活発になったことが挙げられます。自社による訪問営業などはもちろんのこと、外部の委託会社を使っての営業活動が盛んになってきていたのです。

現在においてもプロパンガス業界では、訪問営業による顧客獲得が積極的に行われていますが、このような法律が定められたことにより、消費者としても安心して事業者を乗り換えることができるようになっています。

一週間ルールは、特定商取引法のクーリングオフ制度と意味合いとしては似ています。

尚、「LPガス」というサービスの成立ちなど詳しい内容については、専用のページで解説していますのでご覧ください。

事業者による引き止め行為

ガス会社を切り替える際の手続きを明確に法制化することによって、基本的にはルールに沿ってスムースに作業が進行されるようになりました。
ただし、一部では「問題とも受け取れる行為」が未だに行われている状況で、それが旧事業者による「引き止め行為」です。

引き止め行為とは

引き止め行為とは、上述した一週間の期間中に、顧客を失う側の旧事業者が「切り替えの阻止」を意図して顧客宅を訪れる行為のことです。

簡単に言うと「解約しないでください」と旧事業者が引き止めに来るのです。

この引き止めに関しては、新事業者と旧事業者の関係値や、旧事業者の方針、地域性などによって異なるため、「絶対にあること」ではありません。


旧事業者としては、顧客を失いたくないと考えるのは当然であるため、合法の範囲内で行われる引き止めであれば問題はないと考えられます。

ただ、一部では強引な引き止めが行われるケースもあるため、消費者としては十分に注意する必要があるでしょう。

こうした引き止め行為が行われるのは、業界のいわば慣習とも言えるものですが、これはプロパンガスが「地域密着型のサービス」であるからこそ行われているものと考えられます。

プロパンガスは、ボンベから供給されるサービスであり、一定の距離内にガス会社の営業所が位置しています。そして一定の頻度で作業員がボンベ交換のため顧客宅を訪れることから、消費者と事業者の距離が近いと言えるでしょう。

訪問できる範囲内に営業所を構えている上、消費者と事業者が対面するサービスであるからこそ、このような引き止め行為が慣習として行われているのです。

引き止めに対する対応

引き止め行為の是非については解釈が様々ありますが、あまりにもしつこい引き止め行為は、消費者の自由意思を阻害する行為であるため、問題ありだと言えるでしょう。

もしもお客様が「引き止めに応じる気持ちがない」状態であれば、「はっきりと明確に断る」ということがとても大切です。


明確に断る意思を伝えたにも関わらず、退去しない、再度訪問するような行為は法律に違反しています。

しっかりと断ることが大切
はっきりと断ることが大切

そのようなことがあったら、警察や消費者庁または消費生活センターなどの公的機関に連絡する旨を伝えましょう。それでも引き下がらなかったら、実際に連絡することをお勧めします。

近年は情報社会であり、そこまで強引な引き止め行為をする事業者は少なくなってきています。

ただLPガスの事業者は全国で1万7千社近くあり、大小様々な団体が存在しています。その中には、未だに悪質な引き止め行為をする業者があることが筆者の耳にも入っています。一部の事業者は、切り替えしようとしている消費者に対し暴言を吐いたり、嫌がらせ行為をするなどの違法な引き止めを行っているようです。

ケースとしては非常に少ないかと思いますが、万が一の場合には、上述したような公的機関に連絡する対処方法があることを覚えておきましょう。

心配な方は、事前に録音または録画の準備をしておくことをお勧めいたします。また引き止めに応じる考えがない場合には、玄関を開けてはいけません。

尚、上記したような違法行為を行う事業者は、極めて限られた一部のガス会社のみです。ほとんどの事業者は、「解約しないでください。」という一般的なお願いに伺うのみですのでご安心ください。

引き止めに応じる意思がある場合

それとは逆に、お客様の方で「条件によっては、引き止めに応じる意思」がある場合には、応じた際の基本料金と従量単価などの条件を確認しましょう。

よくある話として、新事業者の金額と同じにする、または従量単価を少し下げるなどの条件提示です。そうした条件を提示された場合には、「その金額がどのくらいの期間継続されるのか」をきちんと確認した上で判断することが大切です。

「言わなければ安くしないのか」「今まで高かった分はどうなるのか」と考える方は、はっきりと断って切り替えましょう。

閉栓中の一週間ルール

中古住宅を購入されて新たにお引越しする、長らく住んでいなかった建物に改めて住むことになったなど、「現在プロパンガスが供給されていない物件」で新たに契約する場合には、どうなるのでしょうか。

この場合、まずは「ボンベやメーターなどのガス設備」が引っ越し先物件に設置されているかどうかが、ポイントになります。(給湯器やコンロなどのガス機器は関係ありません。)

ボンベやメーターに関しては、物件所有者の持ち物ではなく、ガス会社の持ち物という認識になります。従って物件の所有者だからといって、勝手に廃棄するなどの行為は犯罪行為となってしまう可能性がありますのでご注意ください。

  • 「ボンベとメーター両方とも設置されている」
  • 「ボンベは無く、メーターだけ設置されている」

この場合には、一週間ルールが適用されます。上述した法律の条文「他の液化石油ガス販売事業者の所有する供給設備が既に設置されるとき~」に該当するからです。

「ボンベもメーターも設置されていない」場合には、一週間ルールは適用されません。明日開栓して欲しいというご要望であっても、準備さえ整っていれば対応可能です。

一般的にプロパンガス事業者は、戸建て住宅の顧客が転居による解約で空き家になったとしても、ボンベやメーターを残しておくことが通例になっています。(最近では、保安や防災の観点からボンベは撤去し、メーターだけ残していくことが多くなっています。メーターは無く、ボンベだけ残っていることは通常ありません。)

これは次に入居する方が現れた際、再び契約が欲しいという考えから、あえて残しておくのです。実際、メーターを残しておくことにより、新しい入居者が他のガス会社と契約を望んだとしても一週間以上前に申し込まなければ開栓が間に合わないということになってしまいます。

中古住宅にお引越しされる方は、ボンベやメーターが残っているかどうかがポイントになるのです。

さらに補足すると、ボンベやメーターが残っていた場合、NG会社の問題も発生します。プロパンガス業界は、事業者同士が提携していて、「顧客を奪い合わない約束」を結んでいることがあります。そのため、「どこのガス会社のボンベ・メーターがあるのか」も重要になるのです。