2020年に日本政府は、カーボンニュートラルを目指すことを正式に宣言しました。カーボンニュートラルとは、排出される温室効果ガスの排出量を実質ゼロにした状態を指します。

つまりカーボンニュートラルを目指す上で、温室効果ガスは極めて重要な要素なのです。

温室効果ガスは、英語では「Greenhouse Gas」という名称で「GHG」と略されることもあります。

このページでは、温室効果ガスについて解説しています。

温室効果ガスとは

温室効果ガスとは、大気中に含まれている、太陽からの熱を封じ込める働きがある二酸化炭素やメタンなどのガスの総称です。

温室効果ガスは、地表から放射された赤外線の一部を吸収する効果があり、地表を暖めてくれるのです。

温室効果ガスの種類

温室効果ガスという名称は、一種類のガスを特定したものではありません。地表を暖める効果のあるガスをまとめて指した呼称です。

最も良く知られている温室効果ガスは二酸化炭素ですが、その他にもいくつかの種類があります。

温室効果ガスの種類
  1. 二酸化炭素(CO2)
  2. メタン(CH4)
  3. 一酸化二窒素(N2O)
  4. ハイドロフルオロカーボン類 (HFCs)
  5. パーフルオロカーボン類 (PFCs)
  6. 六フッ化硫黄 (SF6)
  7. 三フッ化窒素(NF3)

上記の7種類が温室効果ガスとして定められています。4~7は「代替フロン」という名称でまとめて表記されることもあります。

二酸化炭素(CO2)

二酸化炭素は、化学式の通り「炭素原子1個=C」に「酸素原子2個=O2」が結びついた物質です。

私たちの生活に身近な商品としては、ビールや炭酸飲料、さらにドライアイスにも二酸化炭素が使用されています。

二酸化炭素発生源の例
二酸化炭素は、石炭や石油などの化石燃料(天然ガス、LPガス、ガソリンも含む)のほか、木やプラスチックなどの物質を燃やす時にも発生しています。
また生物が呼吸する上でも二酸化炭素を排出しています。

温室効果ガス排出量を削減する上で、最も重要になるのが二酸化炭素です。

メタン(CH4)

メタンは「炭素原子1個=C」に「水素原子4個=H4」が結びついた物質です。メタンは、天然ガスの主成分として都市ガスに使用されています。

メタン発生源の例
メタンは、水田や家畜のゲップ、ふん尿などから発生しています。日本においても牛のゲップが環境問題として大きく取り上げられることがあります。

温室効果は、二酸化炭素の25倍です。

一酸化二窒素(N2O)

一酸化二窒素は、「窒素原子2個=N2」に「酸素原子=O」が結びついた物質で、亜酸化窒素と呼称されることもあります。

一酸化二窒素は、人間が吸収すると陶酔する作用があるため「笑気ガス」とも呼ばれ、麻酔の際に使われています。

一酸化二窒素発生源の例
  • 海洋や土壌
  • 窒素肥料
  • 製造工場などの工業活動

温室効果は、二酸化炭素の298倍とされています。

代替フロン等

代替フロンは、一種類の物質を指すのではなく、ハイドロフルオロカーボンやパーフルオロカーボン、六フッ化硫黄、三フッ化窒素などの総称です。

フロンとは、炭素とフッ素が結びついた物質です。

かつてフロンは、冷蔵庫やエアコンなどの冷媒用、さらに発泡剤などに大量に使用されていました。

かつてはフロンが広く使用されていた
しかしフロンがオゾン層破壊の原因であることが分かってから、主なフロンは1997年から生産が禁止になりました。フロンの代わりに登場したのが「代替フロン」です。

温室効果は二酸化炭素の数百から数万倍にもなりますが、オゾン層を破壊することはありません。

温室効果ガスの割合

人為起源による温室効果ガスは、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンの4つに大きく分類されます。

温室効果ガスの内訳を見ると、図の通り二酸化炭素が全体の75%を占めています。次にメタンが18%と続いています。

二酸化炭素は、物質あたりの温室効果としては低いですが、排出される量が膨大であるため、地表を暖める効果としては最も大きくなっています。

データを日本国内に絞った場合、実に全体の約90%を二酸化炭素が占めています。

化石燃料をなるべく使わないようにする
二酸化炭素の内訳を見ると、化石燃料に由来している排出量が64%となっています。
温室効果ガスの排出量を削減するためには、化石燃料への依存度を減らすことが重要になるのです。

また18%の割合を占めるメタンの存在も無視できません。

メタンは、水田などにおいて枯れた植物が分解する際に発生しています。さらに家畜のゲップや天然ガスの採掘時にも発生する温室効果ガスです。

メタンガスの削減に関しても、化石燃料からの脱却が重要な鍵を握っています。

温室効果ガスが悪いのではない

温室効果ガスは、太陽から発せられる熱を地表に閉じ込める役割を担っています。

温室効果ガスの役割
温室効果ガスがあることにより、地球の平均気温は約14℃に保たれているのです。
もしも温室効果ガスがなかったとしたら、平均は-19℃になってしまうとされています。

本来、温室効果ガスというものは、生物が地球上で生きるために必要不可欠なものなのです。

問題となっているのは、あくまでも「温室効果ガスが増えすぎてしまったこと」であり、温室効果ガス自体が悪い働きをしている訳ではありません。

近代になって温室効果ガスが急増した

温室効果ガスが増えすぎてしまった要因は、人類にあります。

文明の発展で温室効果ガスが増えた
特に18世紀にイギリスで産業革命が起こって以来、化石燃料が大量に消費され続けたことが、温室効果ガスの増加に大きく影響しています。
これは、上記の化石燃料由来の二酸化炭素排出量が全体の64%に上っていることからも明白です。

つまり長い地球の歴史の中で、この300年ほどの活動により、地球上の環境を大きく変えてしまったことになるのです。

温室効果ガス削減の取り組み

現在、日本を含めた多くの国々で温室効果ガスの排出量を削減する取り組みが進められています。

例えば、省エネ運動です。

電気機器が省エネモデルへ
最新の機種が続々と開発され、従来よりもエネルギーを高効率で生み出す技術が生み出されています。省エネ機種を使用することにより、排出される二酸化炭素を確実に減らすことができます。

加えて、地球上で生活している一人一人の方も、以前よりも節電や節ガスなどを意識する方が増えているでしょう。

また森林保護や植林活動も世界各地で活発に行われています。樹木は光合成により二酸化炭素を取り込んで酸素を生み出してくれます。

さらにメタンガスを減らす取り組みも盛んです。家畜用の餌を改良することにより、従来よりもメタンの発生を抑える技術が開発されているのです。

再生可能エネルギーへの転換

太陽光パネル
太陽光パネル

温室効果ガスを削減するにあたり、最も重要になるのが「化石燃料からの脱却」です。

人間の経済活動の大元であるエネルギー源を、化石燃料以外に転換する動きが世界各地で進められているのです。

代表的なものが再生可能エネルギーです。

化石燃料ではないエネルギー
化石燃料から自然由来のエネルギーに変更することで化石燃料への依存度を下げようとする活動が盛んに行われています。
太陽光発電がよく知られますが、そのほか風力や水力、またバイオマス発電の研究も注目を集めています。
これらは自然に補充されるエネルギーですので、いつか枯渇してしまう化石燃料とは大きく異なる上、温室効果ガスの排出を大きく減らすことが可能です。

今後、どこまで化石燃料から再生可能エネルギーへ転換できるのかが、温室効果ガスの削減、並びにカーボンニュートラル実現のポイントになるでしょう。

京都議定書

世界の動きを見ると、1997年12月に京都市で国際会議が開かれ、地球温暖化防止に向けた国ごとの取り組みや目標が定められました。

主な温室効果ガス排出元である先進国が、2008年から2012年の間に達成すべき具体的な数値目標が示され、地球温暖化防止が世界の共通目標として示されたのです。

この会議で採択された条約は、通称「京都議定書」と呼ばれています。

パリ協定

2015年12月には、パリで第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)が開催されました。この会議において京都議定書に代わる気候変動に関する国際的枠組みが採択されました。

「世界共通の目標」へ
パリ協定では、先進国のみではなく、気候変動枠組条約に加盟する全196カ国の目標数値がはじめて示されることになりました。

世界中のすべての国々ではありませんが、多くの国家の共通目標として「地球温暖化防止」「温室効果ガス排出量の削減」が認識されたのです。

カーボンニュートラル宣言

日本国内においては、2020年10月に「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」ことが政府から公式に宣言されました。

日本政府が公式に宣言
温室効果ガスの排出量を削減するだけでなく、同時に吸収量を増やす活動をすることにより「実質ゼロ」にするという目標が国から示されたのです。
カーボンニュートラル
「温室効果ガスの排出量をできる限り削減」した上で、「どうしても発生してしまう分を植林活動などにより吸収して相殺」され、プラスマイナスゼロになった状態をカーボンニュートラルと呼んでいます。
この宣言により、排出量を削減する活動と並行して、吸収量を増やす行為も取り組まれるようになっています。
参照:カーボンニュートラルとは

また政府が公式に宣言したことにより、日本国内の企業においてもカーボンニュートラルを目指すことが共通認識とされました。それと共にカーボンオフセットの考え方が広く浸透し始めています。

このような考え方に伴い、環境問題に即した新たな商品やサービスが続々とはじめられることになったのです。

環境に優しいエネルギー商品の開発

政府がカーボンニュートラルを目指すことを宣言して以降、ガス・電気業界でも新しいサービスが開始されています。

カーボンニュートラルされた電力プラン
電気に関しては、各家庭やビルなどにおいて太陽光パネルが設置されることも一般的となりました。また排出される二酸化炭素を実質ゼロにした電力プランが一部の事業者から販売されています。

ガス業界においても同様の動きが見られます。

プロパンガス業界においては、カーボンニュートラルLPガスカーボンオフセットLPガスという商品が誕生しました。これらは、カーボンクレジットを使用することにより、排出される二酸化炭素を一部またはすべて実質ゼロとする商品です。

プロパンガスは元々、都市ガスなど他のエネルギーと比べて二酸化炭素の排出量が少ないという特徴があるのですが、さらに削減する活動が進められています。

都市ガスは天然ガスからの脱却
都市ガスにおいても、「e-methane(eメタン)」の開発が進むなど、天然ガス依存からの脱却が着々と進められています。
また従来通り天然ガスを使用する都市ガスにおいても、プロパンガスと同様にカーボンニュートラル都市ガスの供給が開始されています。

温室効果ガスの削減を目指す上で、エネルギー業界が重要な役割を担っています。電気やガスを使用することで発生する二酸化炭素が全体の多くを占めているからです。

今後もエネルギー業界では、新たなサービスが続々と開始されることになるでしょう。