
LPガス会社は、供給契約を結んだ顧客宅で災害が起こった際、適切な対処をしなければならないという安全上の義務を負っています。
従って一定の範囲内でなければ供給契約を結んではいけないと法令により定められています。
顧客宅でガス漏れや火災などの災害が発生した際、一般的には顧客からの通報または消防隊員など定められている通報ルートでガス会社へと知らされることになります。
ただ近年では、技術の発達により「集中監視システム」と呼ばれる災害が起こったことを自動的に検知し通報される仕組みが構築されています。
このページでは、プロパンガスの集中監視システムについて解説しています。
目次
集中監視システムとは

集中監視システムとは、顧客宅のガス利用状況を24時間365日体制で見守り、異常を感知した際に自動的に通報される仕組みを指しています。
これは、供給場所に設置されるマイコンメーターに搭載される機能です。
集中監視システムを導入することにより、ガスに関するトラブルが発生した際、消費者から通報をしなくても、自動的に供給しているプロパンガス事業者に連絡されます。
例えば就寝中のガス漏れや、ガスの消し忘れなど、利用者が感知できない災害が発生、または発生する可能性があることを、ガス会社がいち早く知ることができるようになるのです。
また火災など大きなトラブルが発生した際、消費者に余裕が無く119番通報しかできなかったような場合でも、ガス会社側は事故が発生したことを素早く知ることが可能になります。
集中監視システムを導入することで顧客の安全性は、飛躍的に向上することになります。そのため、行政としても集中監視システムの導入を積極的に進めています。
集中監視システムを導入する企業は優遇
現状では、すべてのガス会社が集中監視システムを導入するには至っていません。
集中監視システムの導入を一定の割合以上で導入している事業者に対しては、定期点検に関する条件を緩和、供給して良い距離を延長するなどの優遇措置を施しています。


通信方法

プロパンガスは、ボンベから供給されるので、基本的に各戸が独立しています。
従って何らかの通信方法で、マイコンメーターと集中監視センターと呼ばれる機関をつながなければなりません。
通信手段に関しては、一つに限られているのではなく、集中監視センターによって採用している手法が様々あります。
どの方法により通信するのかについては、各お宅の状況によって判断することになります。
電話回線
以前は、電話回線による通報が主流でした。
固定電話の回線をメーターと繋げて自動的に通報される仕組みです。
ただこの方法では、顧客が固定電話回線を引いていることが導入するための条件となってしまいます。
近年では、固定電話番号を所有しないお宅も増えている上、通信する際に電話回線を使用するため、顧客にわずかながら通話料金が発生してしまいます。
そのため電話回線による通報システムは、採用される機会が減少する傾向にあります。
インターネット
マイコンメーターと集中監視センターをインターネット回線によって繋げることにより通報するシステムです。通常は受信子機をメーターに取り付け、無線で集中監視センターとつなぐことになります。
インターネットによる接続は、顧客がインターネット回線を契約しているかどうかは関係ありません。
ただメーターに取り付けた無線LAN子機が受信できる範囲内にインターネット電波があることが条件となってしまいます。
LTE・5G・PHS・スマートメーターなど
そのほか、モバイル用の通信規格であるLTEや5Gなどを利用して集中監視センターと連携する方法も採用されています。
インターネットも同様ですが、これらの手段を採用する際、企業には通信費用が発生してしまいます。
そのため費用が高めであるLTEは見送られるなど、各ガス会社によってどの通信方法が採用されるかは判断が分かれています。
またこちらも各携帯電話通信の電波が受信できる場所になければつなげることはできません。
その他の集中監視システム通信方法の例
電力のスマートメーターと接続して通信する方法も一部では採用されています。この場合には、顧客宅の電気メーターがスマートメーターになっていることが条件となります。
その他にも有線放送やケーブルテレビ回線に接続する方法なども事業者によっては採用しています。
集中監視センター

顧客宅で事故が発生した際に通知される先ですが、通常はプロパンガス会社に直接連絡が入るのではありません。
一般的には、「集中監視センター」と呼ばれる機関が異常を察知し、そこから各ガス会社や緊急時対応を任されている保安機関に連絡が入るようになっています。
集中監視システムや集中監視センターは通常、ガス会社自体が運営しているのではなく、メーターを取り扱う事業者などが運営しています。
例としては
- NTTテレコン保安センター
- 東洋計器マルチセンター
などがあります。
大規模LPガス事業者は自社運営している場合も
大規模なLPガス事業者では、自社独自で集中監視システムを構築していることもあります。
例えばLPガス大手のニチガスでは、「スペース蛍」というシステムを開発し、自社グループで利用すると同時に、同業他社の保安業務も請け負っています。
自動通報だけではない集中監視システムのメリット

集中監視システムを導入することで、得られるメリットは緊急時の対応だけではありません。
消費者と事業者双方にとって様々な利点があります。今後は、集中監視システムの導入が広がっていくことになるでしょう。
遠隔で閉栓・遮断
ガスの消し忘れやガス漏れが発生した際、遠隔で遮断できるようになります。
危険を通報するだけでなく、ガスを止めることができますので、被害が広がるまたは事故が発生することを未然に防ぐことができるのです。
またガス警報器と集中監視システムがつながっていれば、警報器による異常感知により遮断することも可能です。
尚、集中監視システムを利用することにより、ガス代の未払いなどによる閉栓も遠隔で行うことができるようになります。


遠隔での検針
集中監視システムを利用して遠隔でガス検針を行うことができます。
一般的には、検針員が各お宅を訪問して物理的に使用量を計測するのですが、この作業を無人化して自動的に行うことができるようになるのです。
事業者にとってはコストの削減、消費者にとっては敷地内に人が入ってくる機会を減らすことができます。
また手動検針では、天候などの外部要因により作業効率が影響を受けてしまいます。検針日が月によって違うということが起こり得るのですが、遠隔にすることで毎月統一することが可能です。
ボンベ残量の把握・ガス切れの防止
集中監視システムで、ボンベ内のガスがどれくらい残っているのかを把握することもできます。
ボンベは、ガス会社のスタッフが交換するのですが、通常は定期的に行うことになります。
遠隔で残量を把握することにより、不必要なボンベ交換を防ぐことができるため、大幅な効率化につながるのです。
また消費者にとっては、ボンベ内のガスがなくなってしまう「ガス切れ」を防ぐことができます。急にガスの使用量が増えることになったとしても安心です。
その他のメリット
その他、集中監視システムを活用することで、より詳細なガス使用量を把握することができることも考えられます。
これは電力でも共通しているのですが、将来的には「〇月〇日に使用したガス量は〇㎥でその日のガス代は〇円」のように、細かなガス使用量を顧客がスマートフォンで見ることができるようなサービスが展開されることになるでしょう。
またガス以外の家電などとも連動して同じようなサービスができるとも考えられます。
集中監視システムのデメリット
上述のように、集中監視システムを導入することは、事業者と消費者どちらにも多大なメリットをもたらします。
「すべてのガス会社がこのシステムを導入すれば良いのでは」と感じる方もいるかと思いますが、導入にはやはり費用がかかってしまいます。
集中監視システムのデメリットを挙げるとすれば「導入コストが高い」ことでしょう。
上述したように、集中監視システムを企業が導入するには、なにかしらの方法で通信しなければなりません。事業者としては、毎月固定で通信費用が必要になる上、システムを委託する費用もかかってしまうのです。
導入することによる業務効率化のメリットは多大にあるのですが、今のところ導入するかどうかの判断は企業によって分かれています。
ただ今後は、技術開発により導入コストがより下がると推測できます。集中監視システムを導入することが一般的になっていくでしょう。


集中監視システムが導入されているかどうか

プロパンガスをご利用中の方が「自宅に集中監視システムが採用されているのかわからないので知りたい」という場合には、契約中のガス会社に問い合わせてみましょう。
集中監視システムが採用されているかどうかは、事業者によって且つそれぞれのお宅によって異なります。
「集中監視システムを導入しているガス会社」であったとしても、すべての顧客に対してシステムを導入しているのではありません。
各お宅の環境によって使い分けていますので、不明な方は聞いてみましょう。
またガス会社の切り替えで導入している企業に変更したいというご要望でしたら、当社で承りますので、お気軽にご相談ください。LPガス料金を安くしたいという方も同様にお問い合わせください。