
日本国内で普及しているガスサービスは、大きくプロパンガスと都市ガスの2つに分けられます。
新築で戸建て住宅を建てる方、引越し先物件を探している方、プロパンガスから都市ガスに切り替えを検討されている方など、プロパンガスと都市ガスの料金について知りたい方は多いかと思います。
このページでは、プロパンガスと都市ガス双方の料金比較について解説しています。
一般的には、都市ガスの方がプロパンガスよりも料金が安いと言われており、それは総じて事実です。
ただ、どんな場合においてもそれが当てはまるかというと、必ずしもそうではありません。
この記事では、両者を比較するにあたり「どのように考えれば良いのか」など、前提となる情報を掲載しています。具体的な金額差については、地域ごとにページを作成しています。
- 広域関東圏(東京都・埼玉県・神奈川県・千葉県・茨城県・栃木県・群馬県・山梨県・静岡県・長野県・新潟県)
- 関西地方(大阪府・兵庫県・京都府・奈良県・滋賀県・和歌山県・福井県)
- 中部地方(愛知県・岐阜県・三重県・石川県・富山県)
- 北海道
- 東北地方(宮城県・福島県・山形県・秋田県・岩手県・青森県)
- 中国地方(広島県・岡山県・山口県・鳥取県・島根県)
- 四国地方(香川県・愛媛県・高知県・徳島県)
- 九州地方(福岡県・佐賀県・長崎県・大分県・宮崎県・熊本県・鹿児島県)
目次
プロパンガスと都市ガスを比較するには

プロパンガスと都市ガスの料金を比べるにあたり、いくつかの前提があります。
まず両者は、ガスサービスではあるものの別の商品であり、中身や使用する機器が違います。異なる商品を100%正確に比較することは不可能です。
下記に目安となる情報や考え方を記載しますが、実際のガス料金はその場所で使ってみてから判明するということになります。
またどのような状況で、比較したいと考えているのかによっても調べ方が異なります。
- 現在プロパンガスを使用していて、都市ガスを引き込んだ場合の料金を知りたい方
- これから引っ越しで、都市ガスとプロパンガスの物件が候補にあがっている方
- これから新築の一戸建てを建築予定で、都市ガスを引き込むかプロパンガスにするか迷っている方
- 物件オーナー様で、どちらの建物を購入しようか検討している
など、状況がそれぞれ違うかと思います。
場合によっては、下記に記載する内容が当てはまらない可能性もありますので、あらかじめご了承ください。
尚、ガスサービスに馴染みがなく、そもそも都市ガスかプロパンガスを選べるのか知りたいという方は、「ガスの種類は選べるのか?」をご覧ください。
お引越し前などで、どんなエネルギーが供給されているのかを知りたいという方は、LPガスと都市ガス・オール電化の見分け方をご確認ください。
プロパンガスと都市ガスの事業者数
事業者の数 | 地域性 | ガス会社選択の可否 | |
---|---|---|---|
プロパンガス | 約1万7000社 | 地域でガス会社は決まっていない | 選べるかどうかは物件により異なる |
都市ガス | 約200社 | 地域でガス会社(一般ガス導管事業者)が決まっている | 地域に参入している事業者がいれば選択できる |
料金を比べる際、第一にどのプロパンガス会社と都市ガス会社を比べるのかという点が重要になります。
2023年の時点でプロパンガス事業者数は約1万7000社とされています。対する都市ガスの一般ガス導管事業者数は、200社ほどです。都市ガスは小売事業が自由化されていますので、「新都市ガス」と呼ばれる小売事業者を加えたとしても300社程度にとどまっています。
都市ガスの方は、その地域で一般ガス導管事業者が決まっています。
例えば
- 東京都23区であれば東京ガス
- 大阪市であれば大阪ガス
- 名古屋市であれば東邦ガス
という風に地域ごとで明確に区分けされています。
一般ガス導管事業者というのは、地下を通る導管の持ち主であるので、その区域で工事を行った導管事業者がどこであるかは決まっているのです。
例えば引越し先物件や現在のお住まいで比較する場合、都市ガスの事業者を知るのは難しくありません。一般ガス導管事業者を調べたい方は、日本ガス協会のページを参照ください。
また都市ガスの小売事業は全面自由化されていますので、「お住まいの地域に参入している小売事業者がいれば」、戸建住宅でも集合住宅でも切り替えすることができます。
参照ページ:都市ガス小売事業者を調べる
一方でプロパンガスの場合には、ボンベから供給されるサービスであるため、そのような区分けはされていません。
基本的には、〇〇の地域だからガス会社は〇〇社になるということではないため、比較対象とするプロパンガス会社がどこになるのか(するのか)という問題があります。
お引越しされる方の場合、「ガス会社を選べるのか」という問題もありますので、「プロパンガス物件へお引越しされる方」のページも参照ください。
プロパンガス料金と都市ガス料金を比較する

料金を比べるには、双方の料金を知る必要があります。
どのガス会社の料金を比べるかによりますが、ここでは関東地方を例に挙げてみます。
こちらは都市ガスの代表格である東京ガスの料金表ページです。
使用場所の地区によって別々の料金が適用されるほか、使用するガス機器によって割引プランが用意されているのがわかるかと思います。
それぞれを選択すると、具体的な料金表が表示されます。都市ガスは透明性が高いサービスですので、料金を知ることは難しくありません。
一方でプロパンガスの場合には、どうでしょうか。
プロパンガス会社は多数あるのですが、ここでは関東圏の大手2社を例に挙げます。
こちらは、岩谷産業グループのイワタニ首都圏の料金表ページです。
標準料金という名目で金額が記載されています。
こちらもプロパンガス小売大手ニチガスのホームページです。
同じく基本料金や1㎥あたりの単価が掲載されています。現在では行政から可能な限り料金を公開するように指導が入っていますので、ある程度の規模のプロパンガス会社であれば、ホームページ上に「標準料金」のような名目で料金が記載されています。
ただ、ここで記載されているのはあくまでも「標準料金」です。
「標準ではない料金もある」、つまり標準料金が必ずしも適用されるとは限らないのがプロパンガスなのです。
当社の料金表ページでも解説していますが、プロパンガスは「個々のお宅で料金が異なる」のが一般的です。
都市ガス料金は一定、プロパンガスは一定ではない

プロパンガスと都市ガスの料金を比べる際、最も重要になるのが料金設定の部分です。
都市ガス料金
- 全顧客で同じガス料金が適用される
- プランの違いがあるものの、プランの適用条件は全顧客統一
プロパンガス料金
- 同じガス会社であったとしても、顧客ごとに適用される料金が異なることが多い
- 値引きなどが適用される条件も明確でない
という特徴があります。
都市ガスの料金は、基本的に透明化されています。ホームページなどで各プランの適用条件や料金体系が公開されていて、それがすべての顧客に対して平等に適用されます。
一方でプロパンガスの場合、同じガス会社の顧客A宅とB宅で料金が異なることが一般的である上、その根拠も明確ではないことがほとんどです。
前項でプロパンガスの標準料金について触れましたが、必ずしもそれが適用されるとは限らないのです。むしろ標準料金と同額が適用される可能性の方が低いでしょう。
つまり都市ガスの場合には、使用するガス機器と使用量が想定できれば適用されるプランの特定が可能、ガス料金を計算することができます。
対してプロパンガスは、その物件ごとに適用されるガス料金が異なるため、確定した料金を事前に把握することが難しくなってしまいます。
この記事をご覧になっている方が、「現在プロパンガスを使用していて、もしも都市ガスにした場合の料金を知りたい」という場合には、比較的簡単に比べることができます。
しかし、これからお引越しされるなど、適用されるプロパンガス料金がわかっていない方が比較しようとする場合、正確に比べることが難しいのです。
このようなプロパンガス料金の不透明さは、長年問題視されています。
上述したような事情があるため、プロパンガスと都市ガス料金の金額差は、ケースバイケースで大きく変わります。
これから引越しする方

これからお引越しを予定している方で、プロパンガスの物件にしようか、都市ガスの物件にしようかと悩んでいる方も多いでしょう。
都市ガスとプロパンガス物件が混在している地域の場合、家賃は都市ガス物件の方が高く、プロパンガス物件は安いことが多いかと思います。
都市ガスは料金が一定で且つ安い、プロパンガスは高い傾向にあるからです。ガス代は毎月支払うランニングコストですので、このような家賃設定になるのは当然でしょう。
またすでに上述している通り、都市ガス料金に関しては、引越し先が一戸建てか集合住宅かは関係ありません。使用している機器によって料金プランが決まりますので、一人暮らしでも家族住まいでも条件は同一です。
一方でプロパンガスの場合、集合住宅よりも一戸建ての方が料金は安い傾向にあります。
一戸建てにお引越しされる方

お引越し先が一戸建ての方は、比較的安いプロパンガス料金が適用されることがあります。
ただ、プロパンガス料金は個別での見積もりになりますので適用される金額はその都度異なります。
地域はもちろん、新築か中古住宅か、持ち家か賃貸かによっても異なりますので、プロパンガス料金の見積もりをご希望される方は、プロパンガス物件へ引っ越しをご覧ください。
特に中古のプロパンガス物件に引越しされる方は、都市ガスと同じ水準の金額でご案内できることも少なくありません。当社でも開栓予約を承っていますのでお気軽にご相談ください。
参照ページ:中古の戸建住宅へ引っ越しされる方
都市ガスにした場合の料金を知りたい方は、地域の「一般ガス導管事業者」と呼ばれるガス管を所有している会社のホームページをご覧ください。例えば東京ガスや大阪ガス、東邦ガスがそれに該当します。
一般ガス導管事業者がわからない方は、こちらのページで検索することができます。
集合住宅へお引っ越しされる方

プロパンガスが供給されている集合住宅は、例外を除き建物でガス会社が決まっています。入居者がガス会社を選ぶことができません。
すでに引越し先物件の候補がある場合には、建物の管理会社などに大まかなガス料金を尋ねてみるのも良いでしょう。またはその物件に供給しているガス会社を確認して、その企業のホームページを確認するのも良いかもしれません。
繰り返しますがプロパンガスは、適用される実際の料金はその物件によって異なります。
また詳しくは別ページで解説していますが、小型集合住宅のプロパンガス料金は高めに設定される傾向があります。


一方で大型の集合住宅では、都市ガスよりも安いなど様々な面で優遇されている物件もあります。
都市ガスの場合には、一戸建てか集合住宅かの区別はなく料金が決まります。すでに候補の物件がある場合には、供給している都市ガス会社のホームページを見れば料金を知ることができます。
なぜ料金体系が違うのか
プロパンガス料金は、自由料金制です。つまり法律などによって料金が規制されていないため、ガス会社が自由に料金を決めることができます。
各戸の料金をバラバラにすることができるのもこのためです。プロパンガス会社が悪いことをしている訳ではありません。ただし、消費者側からすると不透明であるという印象は拭えないでしょう。
一方で都市ガスは、公共サービスという扱いになるため、かつては認可制の料金体系でした。総括原価方式と呼ばれる料金体系で、ガス料金を国が監視する仕組みがあり、都市ガス会社としては、自由に料金を決めることができなかったのです。
現在では、都市ガスの小売事業が自由化されたこともあり、例外を除いて都市ガス料金も自由料金制になっています。
都市ガスの方も事業者が自由に料金を決めることができるのです。
ただ、都市ガスの方は元々が許認可制であった影響から、全顧客に対して同条件で料金プランが適用されるという体系が継続されています。
プロパンガス料金の方が安いこともあり得る

都市ガス料金が平等であるということは、視点を変えると「特別扱いができない」ということになります。
逆にプロパンガスの方は、「特別扱いができる」という見方をすることができるのです。
プロパンガスの場合には、業務用で使用量が多い事業所などでは、都市ガスよりも安い料金が適用されることがあります。
また例えば自社が供給している集合物件のオーナー様の自宅などでも、特別料金で安くされることがあります。さらに分譲マンションなど大型の集合住宅では、都市ガスよりも安い上、ガス機器を提供するなどのサービスを提供できることもあります。
参照ページ:大型集合住宅のプロパンガス料金
このような特別待遇ができることから、プロパンガスは絶対に都市ガスよりも料金が高いと決まっている訳ではありません。
プロパンガス料金をどこまで安くできるのかについては、当社でご相談を承ることが可能です。使用量が多い法人様など、特別な環境で使用されている方は、お気軽にお問い合わせください。
プロパンガスの方が熱量が多い
ここまでプロパンガスと都市ガスの料金について解説しましたが、「使用量」についても気を付けなければいけません。
プロパンガスと都市ガスでは、熱量が異なります。熱量とは、カロリーと表現されることもありますが、わかりやすくいうと「火力」が違います。
- プロパンガス:99メガジュール(どの会社も統一)
- 都市ガス:45メガジュール(一般的に流通している都市ガス)
※1㎥あたりの数値。メガジュールは、熱量の単位。
※プロパンガスは成分が統一されています。都市ガスもほぼ統一されていますが例外があります。
このようにプロパンガスの方が、都市ガスよりも約2.2倍、火力が強いのです。
火力が違うということは、例えば同じ量の水を沸騰させるために、必要となるガスの量が異なります。都市ガスの方が約2.2倍、たくさん使わなければならないのです。
プロパンガスと都市ガスを比べる際、このことを考慮しなければなりません。
単純に考えると、プロパンガスを使用した際に10㎥だったとして、都市ガスと比較する際には22㎥使用した想定になります。
同じ10㎥使用した場合の料金を比べてしまうと、都市ガスの方がとんでもなく安いということになってしまいますのでご注意ください。
プロパンガスと都市ガスでは使用する機器が違う
「ガスの使用量」という点を考えた場合、使用する機器も大きな影響があります。
プロパンガスと都市ガスは、成分が違うので使用するガス機器も異なります。
近年は、カーボンニュートラルを目指す社会風潮が強くなったこともあり、省エネ性能を備えたガス機器が続々と開発されています。


高性能な機器は、ガスを効率よくエネルギーに変換する機能があるほか、排熱などを活用してガスを使用しなくてもお湯をつくる技術が備えられているものもあります。
そのため給湯器などの機器が新しいか古いかによって、同じ使い方でも消費するガスの量に差が発生するのです。
これは両者を比べる場合だけでなく、都市ガス同士やプロパンガス同士を比べる場合でも同様です。
同じガスを使用する場合でも、機器によって使用量が変わるということを覚えておきましょう。
その他のプロパンガスと都市ガスの違い

ここまで両者の料金を中心に記載しましたが、プロパンガスと都市ガスでは、その他にも異なる点が様々あります。
プロパンガス | 都市ガス | コミュニティーガス | |
---|---|---|---|
供給方法 | ボンベから供給 | 導管から供給 | 大型タンクの導管から供給 |
事業者数 | 約17000社 | 約200社 | |
ガス料金の決め方 | 供給会社により自由(同じガス会社でも料金が違う) | 自由だが基本的に全利用者一律 | その区域の全利用者一律 |
料金差 | 一般的に都市ガスより高い | プロパンガスより安い | プロパンガスより安いことが多い |
供給可能エリア | 日本全国:事業所から一定(基本20km)の距離以内でないと提供できない | 都市部のみ:導管が敷設されている必要がある | 供給区域、ガス会社が決まっている |
主な成分 | 液化石油ガス(プロパン・ブタン) | 液化天然ガス(メタン) | 液化石油ガス(プロパン・ブタン) |
火力 | 強い(約24000kcal) | 弱い(約11000kcal) | 強い(約24000kcal) |
空気と比べて | 空気より重い | 空気より軽い | 空気より重い |
国の扱い | 公共サービスではない | 公共サービス | 公共サービスではない |
災害時 | 個別供給であるため災害の被害を受けにくい、復旧が早い。 | 集中供給であるため災害の被害を受けやすい、復旧が遅い。 | 集中供給であるため、災害の被害を受けやすい。 |
実際に使ってしまえば同じ「ガス」かもしれませんが、両者は色々な面で違いがあるのです。このような要素が積み重なって料金にも違いが現れています。
プロパンガスについてさらに詳しく知りたい方は、「プロパンガスの解説」をご覧ください。
参照ページ:供給可能距離の解説
プロパンガスと都市ガスの料金比較(まとめ)
ここまでプロパンガスと都市ガスの料金を比べる際の情報を記載しました。
現在のお住まいで両者を比較したいと考えている方は、多くは「現在プロパンガスを使用していて、都市ガスに変えた際の料金を知りたい」という状況かと思います。
この場合には、料金を比べることは難しくありません。
一方でこれからお引越しされる方の場合には、候補になる物件がどこまで決まっているのかによって異なります。特にプロパンガスの方は、料金が安くも高くもなり得るサービスですので、慎重に検討することが大切です。
例えば引越し先が賃貸物件であったとして、オーナーがガス料金をしっかりと管理していることもあります。大型の集合住宅の場合には、とても安い料金設定になっていることもあります。
また戸建て持ち家の場合には、プロパンガス料金は交渉できますので、安く保つことも不可能ではありません。
このような場合には、プロパンガス供給物件であったとしても、都市ガスと同水準の料金で利用することができるでしょう。
このページをご覧になっている方がどのような状況でプロパンガスと都市ガスを比較しようとしているかにより異なりますが、上記をご参考にしていただければ幸いです。