プロパンガスと都市ガスはどちらが安いのか?

日本国内で普及しているガスサービスは、大きくプロパンガスと都市ガスの2つに分けられます。

「新築住宅を建築予定」「引越し先物件を探している」「プロパンガスから都市ガスに切り替えを検討している」など、プロパンガスと都市ガスの料金について知りたい方は多いと思います。

一般的には、都市ガスの方がプロパンガスよりも料金が安いと言われており、それは総じて事実です。
ただどんな場合においても当てはまるかというと、必ずしもそうではありません。

この記事では、両者を比較するにあたり「どのように考えれば良いのか」など、前提となる情報を掲載しています。

地域別・都市ガスとプロパンガスの料金比較
具体的な金額差については、地域ごとにページを作成しています。

プロパンガスと都市ガスを比較する際の注意

プロパンガスと都市ガスは成分が違う
どちらを選ぶのか判断材料としてご覧ください

プロパンガスと都市ガスを比べるにあたり、いくつかの前提があります。

実際のガス料金は使ってみてからわかる
まず両者は、ガスサービスではあるものの別の商品であり、成分や使用する機器が違います。異なる商品を100%正確に比較することは不可能です。
下記に目安となる情報や考え方を記載しますが、実際のガス料金はその場所で使ってみてから判明します。

またどのような状況なのかによっても調べ方が異なります。

どのような環境なのか
  • 現在プロパンガスを使用していて、都市ガスを引き込んだ場合の料金を知りたい
  • 引っ越しで、都市ガスとプロパンガスの物件が候補にあがっている
  • 新築の一戸建てを建築予定で、都市ガスを引き込むかプロパンガスにするか迷っている
  • 物件オーナー様で、どちらの建物を購入しようか検討している
など、状況がそれぞれ違うかと思います。

場合によっては、下記に記載する内容が当てはまらない可能性もありますので、あらかじめご了承ください。

ガスのことをよく知らない方
ガスについて馴染みがなく「そもそも都市ガスかプロパンガスを選べるのかわからない」など、ガスについて知りたい方は、別ページもあわせてご覧ください。

プロパンガスと都市ガスの事業者数

事業者の数地域性ガス会社選択の可否
プロパンガス約1万7000社地域でガス会社は決まっていない選べるかどうかは物件により異なる
都市ガス約200社地域でガス会社(一般ガス導管事業者)が決まっている地域に参入している事業者がいれば選択できる

料金を比べる際、第一にどのプロパンガス会社と都市ガス会社を比べるのかという点が重要になります。

プロパンガス事業者数は、全国におよそ1万7000社あります。対する都市ガスの一般ガス導管事業者数は、200社ほどです。
都市ガスは小売事業が自由化されていますので、「新都市ガス」と呼ばれる小売事業者を加えたとしても300社程度にとどまっています。

都市ガス会社は地域で決まっている

都市ガスは、その地域で一般ガス導管事業者が決まっています。

地域により都市ガス会社が決まっている
  • 東京都23区は東京ガス
  • 大阪市は大阪ガス
  • 名古屋市は東邦ガス
このように地域によって、都市ガス会社が決まっています。
一般ガス導管事業者
一般ガス導管事業者というのは、地下を通る導管の持ち主です。その区域で導管を敷設した事業者がどこであるかは決まっているのです。
例えば引越し先物件や現在のお住まいで比較する場合、都市ガスの事業者を知るのは難しくありません。一般ガス導管事業者を調べたい方は、日本ガス協会HPを参照ください。

また都市ガスの小売事業は全面自由化されているので、参入している小売事業者がいれば、戸建住宅でも集合住宅でも新都市ガス会社に変更できます。参照:都市ガス小売事業者を調べる

プロパンガスは選択肢が多い

プロパンガスは、ボンベから供給されるサービスであるため、地域による区分けはされません。

基本的には、〇〇市だからガス会社は〇〇社になるのではないため、比較対象とするプロパンガス会社がどこになるのか(するのか)という問題があります。

ガス会社を選べるかどうか
持ち家の戸建住宅では、複数の候補の中からガス会社を選ぶことができます。
一方で集合住宅では、一般的にガス会社を選ぶことができません。

引越しする方は、「ガス会社を選べるのか」という問題もありますので、「プロパンガス物件へお引越しされる方」も参照ください。

プロパンガスと都市ガス料金を比較する

プロパンガスと都市ガスは料金体系が異なる
プロパンガスは個々のお宅で料金が違うので注意

当然ながら都市ガスとプロパンガス双方の料金がわからなければ比べることはできません。

どのガス会社の料金を比べるかによりますが、ここでは関東地方を例に挙げてみます。

都市ガスは料金が公開されている
こちらは都市ガスの最大手である東京ガスの料金です。⇒東京ガス料金表

使用場所の地区によって別々の料金が適用されるほか、ガス機器によって割引プランが用意されているのがわかります。
それぞれを選択すると、具体的な料金表が表示されます。都市ガスは透明性が高いサービスですので、料金を知ることは難しくありません。

プロパンガスの場合には、どうでしょうか。

プロパンガス会社は多数あるのですが、ここでは関東圏の大手2社を例に挙げます。

プロパンガスは標準料金が公開されている
こちらは、岩谷産業グループのイワタニ首都圏のホームページです。⇒イワタニ首都圏料金表
標準料金という名目で金額が記載されています。

こちらもプロパンガス小売大手ニチガスのホームページです。⇒ニチガス料金表
同じく基本料金や1㎥あたりの単価が掲載されています。

プロパンガス会社には、行政から可能な限り料金を公開するように指導が入っていますので、多くの会社は、ホームページ上に「標準料金」のような名目で金額が記載されています。参照:標準料金の解説

ただ、ここで記載されているのはあくまでも「標準料金」です。

プロパンガス料金は個別で見積もり
「標準ではない料金もある」、つまり標準料金が必ずしも適用されるとは限らないのがプロパンガスなのです。
料金表ページでも解説していますが、プロパンガスは「個々のお宅で料金が異なる」のが一般的です。

つまりプロパンガスは、適用される料金プランがそれぞれの建物により違うのです。この点で都市ガスと大きく違います。

都市ガスとプロパンガスの料金を一概に比べることはできないのです。

都市ガス料金は一定、プロパンガスは一定ではない

プロパンガス料金は個別で見積もりされる
プロパンガス料金を引っ越し前に正確に知るのは難しい

プロパンガスと都市ガスの料金を比べる際、最も重要になるのが「金額の決め方」です。

都市ガスの料金は、基本的に透明化されています。ホームページなどで各プランの適用条件や料金体系が公開されていて、それがすべての顧客に対して平等に適用されるのが通常です。

都市ガス料金
  • 全顧客で同じガス料金が適用される
  • プランの違いがあるものの、適用条件は全顧客統一

プロパンガスは、同じガス会社の顧客A宅とB宅で料金が異なることが一般的である上、その根拠も明確ではないことも多々あります。

プロパンガス料金
  • 同じガス会社であったとしても、顧客ごとに適用される料金が異なるのが一般的
  • 割引きなどが適用される条件も明確でないことが多い

前項でプロパンガスの標準料金について触れましたが、必ずしもそれが適用されるとは限らないのです。むしろ標準料金と同額が適用される可能性の方が低いでしょう。

料金の決め方が根本的に違う
つまり都市ガスの場合には、使用する場所や機器が想定できれば適用されるプランの特定が可能、事前にガス料金を計算することができます。

対してプロパンガスは、その物件ごとに適用される料金が異なるため、確定した金額を事前に把握することが難しくなってしまいます。

この記事をご覧になっている方が、「現在プロパンガスを使用していて、都市ガスにした場合の料金を知りたい」のであれば、比べることは難しくありません。

しかし、これから引越しなど、適用されるプロパンガス料金がわかっていない方が比較しようとする場合、正確に比べることは実質的に不可能なのです。

このようなプロパンガス料金の不透明さは、長年問題視されています。

このような仕組みであるため、プロパンガスと都市ガスの料金差は、ケースバイケースで大きく変わります。

引越しで物件選びをしている方

都市ガスかプロパンガス物件へ引越し

これから引越しを予定していて、プロパンガスの物件にしようか、都市ガスの物件にしようかと悩んでいる方も多いでしょう。

賃貸で都市ガスとプロパンガス物件が混在している地域では、家賃は都市ガス物件の方が高く、プロパンガス物件は安いことが多いかもしれません。

都市ガスは料金が一定で且つ安い、プロパンガスは高い傾向にあるからです。ガス代は毎月支払うランニングコストですので、このような家賃設定になるのは当然でしょう。

戸建住宅か集合住宅
上述した通り都市ガス料金は、引越し先が一戸建てか集合住宅かは関係ありません。使用している機器によって料金プランが決まりますので、一人暮らしでも家族住まいでも条件は同一です。

一方でプロパンガス料金は、集合住宅は高く戸建住宅は安い傾向にあります。

戸建住宅に引越しする方

戸建住宅では差額がないかもしれない
中古住宅ではプロパンガス料金を安くできることが多い

戸建住宅では、比較的安いプロパンガス料金が適用されることがあります。

ただプロパンガス料金は、個別での見積もりになりますので、適用される金額はその都度異なります。

戸建のプロパンガス物件へ引越す方
地域はもちろん、新築か中古住宅か、持ち家か賃貸かによって料金はもちろん、ガス会社を選べるかどうかが異なります。
中古住宅へ引越しする方
中古のプロパンガス物件では、都市ガスと同じ水準の金額でご案内できることも少なくありません。当社でも開栓予約を承っていますのでお気軽にご相談ください。
参照:中古・戸建住宅へ引越しする方
Inquiry
Webform

都市ガス料金については、地域の都市ガス会社のホームページをご覧ください。例えば東京ガスや大阪ガス、東邦ガスがそれに該当します。

都市ガス会社がわからない方は、こちらで検索することができます。⇒日本ガス協会・ガス事業者検索

集合住宅に引越しする方

プロパンガス料金は集合住宅では高いことが多い
アパートなど小型の集合住宅ではプロパンガス料金は高いことが多い

プロパンガス供給の集合住宅では、例外を除き建物でガス会社が決まっています。入居者は、ガス会社を選ぶことができません。

すでに引越し先物件の候補がある場合には、管理会社などにガス料金を尋ねてみるのも良いでしょう。
またはその物件に供給しているガス会社名を確認して、ホームページを見てみるのも良いかもしれません。
参照:標準料金の解説
集合住宅のプロパンガス料金は高め
また詳しくは別ページで解説していますが、小型集合住宅のプロパンガス料金は高めに設定される傾向があります。

一方で大型の集合住宅では、都市ガスよりも安いなど様々な面で優遇されている物件もあります。参照:分譲マンションのプロパンガス料金

都市ガスについては、一戸建てか集合住宅かの区別はありません。すでに候補の物件がある場合には、供給している都市ガス会社のホームページを見れば料金を知ることができます。

なぜ料金体系が違うのか

プロパンガスは、自由料金制です。つまり法律などによって料金が規制されていないため、ガス会社が自由に決めることができます。

プロパンガス料金は不透明
各戸の料金をバラバラに設定できるのも自由料金制だからです。必ずしもプロパンガス会社が悪いことをしている訳ではありません。
ただ消費者側からすると、不透明という印象は拭えないでしょう。
都市ガスはかつて総括原価方式だった
一方で都市ガスは、公共サービスという扱いになるため、かつては認可制の料金体系でした。
総括原価方式と呼ばれる料金体系で、料金を国がチェックするため都市ガス会社としては、自由に決めることができなかったのです。
現在では、小売事業が自由化されたこともあり、例外を除いて都市ガスも自由料金制になっています。

実は都市ガスも事業者が自由に料金を決めることができるのです。

ただ都市ガスは、元々が許認可制であった影響から、全顧客に対して同条件で料金プランが適用される方針が継続されています。

プロパンガス料金の方が安いこともあり得る

プロパンガス料金は特別扱いすることもできる
プロパンガス料金は特別に安くすることもできる

都市ガス料金は平等ですが、視点を変えると「特別扱いができない」とも捉えられます。逆にプロパンガス料金は「特別扱いができる」という見方もできるのです。

プロパンガスは特別料金で安いことがある
プロパンガスは、使用量が多い業務用の顧客などでは、都市ガスよりも安い料金が適用されることがあります。
また分譲マンションなど大型の集合住宅では、同じく都市ガスよりも安くなることも珍しくありません。

このような特別待遇ができることから、「プロパンガス料金は絶対に都市ガスよりも高い」と決まっている訳ではありません。

プロパンガス料金の見積もりは、当社でご相談を承っています。使用量が多い法人様など、見積もり希望の方は、お問い合わせください。

プロパンガスの方が熱量が多い

ここまでプロパンガスと都市ガスの料金について解説しましたが、「使用量」についても気を付けなければいけません。

プロパンガスと都市ガスでは、熱量が異なります。熱量は、カロリーと表現されることもありますが、わかりやすくいうと「火力」が違います。

プロパンガスと都市ガスのカロリー
  • プロパンガス:99メガジュール(どの会社も統一)
  • 都市ガス:45メガジュール(一般的に流通している都市ガス)
※1㎥あたりの数値。メガジュールは熱量の単位です。
※プロパンガスは成分が同じです。都市ガスもほぼ統一されていますが例外があります。

このようにプロパンガスの方が、都市ガスよりも約2.2倍、火力が強いのです。

火力が違うということは、例えば同じ量の水を沸騰させるために必要なガスの量が異なります。都市ガスの方が約2.2倍、多く使わなければならないのです。

プロパンガスと都市ガスを比べる際、このことを考慮しなければなりません。

都市ガスとプロパンガス料金を比べる際の注意
プロパンガスを使用した際に10㎥だったとして、都市ガスは22㎥使用する想定になります。
同じ10㎥使用した場合の料金を比べてしまうと、都市ガスの方がとんでもなく安いとなってしまいますのでご注意ください。

プロパンガスと都市ガスでは使用する機器が違う

「ガスの使用量」には、使用する機器も大きく影響します。

プロパンガスと都市ガスは、成分が違うので使用するガス機器も異なります。

また近年は、カーボンニュートラルを目指す社会風潮が強くなったこともあり、省エネ性能を備えたガス機器が続々と開発されています。

最新機種の方が使用量を少なく抑えられる
高性能な機器は、ガスを効率よくエネルギーに変換する機能があるほか、排熱などを活用してガスを使用しなくてもお湯をつくる技術が備えられているものもあります。
そのため給湯器などの機器が新しいか古いかによって、同じ使い方でも消費するガスの量に差が発生するのです。

これは都市ガス同士やプロパンガス同士を比べる際でも同様です。同じガスを使用する場合でも、機器によって使用量が変わることを覚えておきましょう。

その他のプロパンガスと都市ガスの違い

都市ガスとプロパンガスのメーター
都市ガスメーターの方が大きい

プロパンガスと都市ガスでは、その他にも異なる点が様々あります。

プロパンガス都市ガスコミュニティーガス
供給方法ボンベから供給導管から供給大型タンクの導管から供給
事業者数約17000社約200社
ガス料金の決め方供給会社により自由(同じガス会社でも料金が違う)自由だが基本的に全利用者一律その区域の全利用者一律
料金差一般的に都市ガスより高いプロパンガスより安いプロパンガスより安いことが多い
供給可能エリア日本全国:事業所から一定(基本20km)の距離以内でないと提供できない都市部のみ:導管が敷設されている必要がある供給区域、ガス会社が決まっている
主な成分液化石油ガス(プロパン・ブタン)液化天然ガス(メタン)液化石油ガス(プロパン・ブタン)
火力強い(約24000kcal)弱い(約11000kcal)強い(約24000kcal)
空気と比べて空気より重い空気より軽い空気より重い
国の扱い公共サービスではない公共サービス公共サービスではない
災害時個別供給であるため災害の被害を受けにくい、復旧が早い。集中供給であるため災害の被害を受けやすい、復旧が遅い。集中供給であるため、災害の被害を受けやすい。

実際に使ってしまえば同じ「ガス」かもしれませんが、色々な面で違いがあるのです。このような要素が積み重なって料金にも違いが現れています。

プロパンガスについてさらに詳しく知りたい方は、「プロパンガスの解説」をご覧ください。参照:供給可能距離の解説

プロパンガスと都市ガスの料金比較(まとめ)

ここまでプロパンガスと都市ガスの料金を比べる際の情報を記載しました。

現在のお住まいで両者を比較したいと考えている方の多くは「プロパンガスを使用していて、都市ガスに変えた際の料金を知りたい」という状況かと思います。
この場合、料金を比べることは難しくありません。

一方でこれからお引越しする方の場合には、候補になる物件がどこまで決まっているのかによって異なります。特にプロパンガスは、料金が安くも高くもなり得るサービスですので、慎重に検討することが大切です。

引越し先のエネルギーを検討している方
例えば引越し先が賃貸物件であったとして、オーナーがガス料金をしっかりと管理していることもあります。また大型の集合住宅では、とても安い料金設定になっていることもあります。

戸建て持ち家の場合には、プロパンガス料金は交渉できますので、安く保つことも不可能ではありません。
物件によっては、プロパンガス供給であっても、都市ガスと同水準の料金で利用することができるでしょう。

どのような状況でプロパンガスと都市ガスを比較しようとしているかにより異なりますが、上記をご参考にしていただければ幸いです。