
長年プロパンガスを利用している方であれば、事業者による宅内のガス設備の点検が入ったことがあるかと思います。
プロパンガス事業者は、ガスを供給すると同時に顧客の安全をできる限り確保する義務を負っています。
定期的に行われるガス会社による設備点検は、法令による定めに基づいて行われているのです。
プロパンガス事業者の点検にはいくつか種類がありますが、このページでは、プロパンガスの定期供給設備点検と定期消費設備調査について解説しています。
目次
ガス会社は定期点検をしなければならない

LPガス事業に関する法令である液石法では、以下のように定められています。
液化石油ガス販売事業者は、その販売契約を締結している一般消費者等について次に掲げる業務(以下「保安業務」という。)を行わなければならない。
一 供給設備を点検し、その供給設備が第十六条の二第一項の経済産業省令で定める技術上の基準に適合しないと認めるときは、遅滞なく、その技術上の基準に適合するようにするためにとるべき措置及びその措置をとらなかつた場合に生ずべき結果をその供給設備により液化石油ガスを供給している液化石油ガス販売事業者に通知する業務
二 消費設備を調査し、その消費設備が第三十五条の五の経済産業省令で定める技術上の基準に適合しないと認めるときは、遅滞なく、その技術上の基準に適合するようにするためにとるべき措置及びその措置をとらなかつた場合に生ずべき結果をその所有者又は占有者に通知する業務
三 液化石油ガスを消費する一般消費者等に対し、液化石油ガスによる災害の発生の防止に関し必要な事項であつて経済産業省令で定めるものを周知させる業務
液石法(液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律)第三章 保安業務 第二十七条より
法律により設備を点検し、規定されている安全基準に適合しているかどうかをチェックすること、さらに適合していなかった際には、消費者に通知すると同時にそれに対する対策を講じることがプロパンガス事業者に義務付けられているのです。
LPガス事業者は、供給契約を結んでいるすべての顧客に対して、定期点検を行わなければなりません。戸建て・集合住宅・業務用問わず全てが対象となります。
また点検の結果、「ガス漏れしている」「設備が老朽化している」など危険な状態であった際、ガス会社はそれを放置してはいけません。
速やかにそれに対する処置を講じなければ、万が一災害が発生した際には、ガス会社側にも責任があるということになってしまうのです。
尚、事業者には、定期点検以外にも供給開始時点検・調査や容器交換時等供給設備点検など、定められた時に点検をすることが求められています。


築年数が古い物件は注意が必要
LPガス会社は通常、古い物件・古い供給設備が設置されている建物に供給することを好まない傾向にあります。
これは「事故があった際に、ガス会社も責任を問われてしまうかもしれない」という事情があるのです。
ガス会社が定期的に新しい設備の購入を勧めるのは、機器を販売したいという事情もありますが、「顧客の安全に配慮しなければならない」という義務によるものからです。
定期点検の内容
保安業務の条文を見ていただくと、一に「供給設備を点検~」、二に「消費設備を調査~」と記載されています。
消費者としてはあまりこだわらなくても構わないのですが、ガス会社としては供給設備と消費設備双方をチェックすることになります。
つまり宅外と宅内、両方とも点検することになるのです。
定期供給設備点検

供給設備とは、ガス会社の持ち物である容器(ボンベ)やメーターなどを指しています。ボンベに関しては、大型物件ではバルクと呼ばれるタンクを指すことになります。
ただボンベやメーター・圧力調整器の点検は、普段のボンベ交換時に行う決まりですので、通常はここで異常があることはありません。
定期供給設備点検の際には、ガス漏れの試験など普段は行っていない作業をすることになります。
供給設備点検は、主に屋外の作業です。


定期消費設備調査

- ガス機器が適合しているか(都市ガスと間違っていないかなど)
- ガス栓・ホースなど接続で漏れがないか
- ガス機器は危険なものを使用していないか
- 室内に給排気設備がある際には、漏れがないか
一方で消費設備とは、顧客の持ち物であるガス器具を指しています。代表的なものとしては、給湯器やコンロ、ファンヒーターや乾燥機などがあります。
ガス会社としては、顧客の所有物であるガス機器に関しても、安全を確認する義務を負っています。
つまりガス会社による定期点検は、顧客が購入したガス機器についても点検をすることになるのです。
バランス釜やCF釜、さらに室内型ガス瞬間湯沸かし器など、屋内に設置するタイプのガス機器を使用しているお宅は、法令に準拠しているかどうか風呂内も含めて吸気や排気などのチェックが入ります。
定期点検は無料
プロパンガスの定期点検は、無料です。
費用が0円でガス漏れ試験など、安全に関わる点検作業をしてもらうことができます。
顧客の方に費用が発生することはありませんので、安心して点検を受けましょう。
定期点検の期間(頻度)
定期点検の頻度 | |
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一般の事業者(ゴールド認定されていない事業者) | 4年間に一度以上 |
ゴールド保安認定事業者(特例なし) | 4年間に一度以上とされている点検内容の一部が 10年間に一度以上に緩和 |
ゴールド保安認定事業者(特例あり) | 「10年間に一度以上になる対象外の点検」が 5年間に一度以上に緩和 |
定期点検の頻度は、「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則」によりとても細かく定められています。
ポイントとしては、「供給設備」がどのようなものが使用されているかによって異なるのですが、短い場合にはひと月に一度から四年に一度など、設備によって点検頻度が指定されているのです。
一般的に点検頻度が短い供給設備は、公共施設や商業施設など一般家庭以外の場所で使用されています。
通常の住宅においては、4年に一度以上が当てはまります。家庭でLPガスを使用している方は、4年に一度は定期点検が入るということでご認識ください。
業務用で使用している法人など、定期点検の頻度を知りたい方は、契約中のガス会社に確認しましょう。
定期点検が来ていないお宅は
万が一、長年契約しているけど「ガス会社から点検に来たことがない」という方は、法定点検を怠っている事業者の可能性があります。ガス会社が法令を遵守していないことが考えられますので、問い合わせてみるか事業者の変更を検討しましょう。
ガス料金を安くしたいというご要望もあわせて承りますので、事業者の切り替えを検討する方は、当社までお問い合わせください。


定期点検期間の優遇措置

定期設備点検の頻度について、例外があります。
LPガスには、集中監視システムと呼ばれる、顧客宅のマイコンメーターと集中監視センターをつなげることによる遠隔の見守りシステムがあります。
集中監視システムを一定の割合以上で導入している企業に対しては、営業所から供給して良い距離が延長されるという優遇措置があるほか、定期点検の頻度についても緩和されています。


ゴールド認定販売事業者(第一号認定LPガス販売事業者)

集中監視システムを導入している顧客の割合が70%以上であるLPガス会社は、ゴールド保安認定事業者として認められます。
ゴールド保安認定事業者として認められると、4年に1回以上の頻度が10年に1回以上まで緩和されます。
ただしこれは、供給設備により細かく指定されていますので、すべてが10年にまで緩和されるのではありません。設備によっては、ゴールド保安認定事業者であっても4年に一度とされているものもあります。
ゴールド認定販売事業者の特例でさらに緩和
またゴールド保安認定事業者には、特例があります。
一般消費者等の設置する燃焼器の全て(飲食店以外の場合には湯沸器、ふろがま、ストーブの燃焼器)は以下のいずれか要件を満たした場合には、追加特例を受けることができます。
- CO警報器を設置し、ガスメーターと連動して遮断できること。
- 不完全燃焼防止装置が付けられていること。
- 燃焼器が屋外式であること。
この要件のどれかをクリアすることで、ゴールド保安認定事業者のさらに特例措置を受けることができます。つまり一般顧客宅のすべてのガス機器が、上記のどれかに対応していれば特例の対象事業者になるのです。
この特例では、「10年に一度以上」の対象にならなかった調査、つまり4年に一度以上のままであったものが、「5年に一度以上」にまで緩和されることになります。
点検で問題があったら
設備を点検した際、ボンベやメーターなどガス会社所有の「供給設備」に問題があった場合には、当然ながらガス会社が責任を持って対処することになります。
もしも顧客が所有している「消費設備」の方に問題があった際には、作業員からその旨の通知があります。
顧客の所有物には、ガス会社側は強制的になにかを行うことはできませんので、ガス会社としては問題点を指摘した上で、点検履歴にその旨を残して終了となります。
消費設備に問題があった場合、対処するかどうかの最終判断は顧客がすることになります。事業者側としては「しっかりと指摘しました」という証明を残して事故が発生した際のために保存しています。
危険と指摘されたら対応しましょう
点検の結果、そのまま利用することで事故が発生する可能性が高いと判断された場合には、ガス会社側から器具の交換などの提案をされることがあります。
指摘された内容を受けずにそのまま放置すると、ガス会社の方針によっては供給を停止されてしまうかもしれません。
専門の点検員が「非常に危険」と判断した場合には、そのアドバイスにできる限り従うようにしましょう。ガスは危険物ですので、専門家の助言を無視して使い続けるのは、とても危ないです。
定期点検は断ることができる
ガスを使用している消費者としては、法的に「点検を受けなければならない」という義務を負っているのではありません。点検をしなければならない義務を負っているのは、事業者の方です。
従って「どうしても点検を受けたくない」という方は、断ることもできます。
ただし、点検を受けないと、安全上で大きな問題があったことに気づくことができず、とても危険です。どうしてもという事情がない限り、点検してもらいましょう。
定期点検を断ると、点検時の問題を放置した場合と同様に、万が一事故が起こった際の責任をすべて自身が負うことになってしまいます。
またこちらも同様に、点検を長期間にわたり拒否した場合には、ガス会社によっては供給を断られてしまうことが考えられます。ガス会社としては、「顧客の安全を確保していなかった」と判断されると、災害が起こった際に自社の責任が問われてしまう可能性があるため、点検拒否を避けたいのです。
近年では、ガス器具の発達により設備の安全が確保できていれば、LPガス事故はそれほど頻繁には起こっていません。
ご自身の安全のためにも、定期点検には協力することをお勧めいたします。


家に入れたくない
定期点検は、供給設備と消費設備の双方を点検します。
従ってガス機器が宅内にあるお宅は、外だけではなく必ず宅内にスタッフが入りチェックすることになります。
なかには、室内に他人を入れたくないという方もいらっしゃるかと思いますが、安全のために仕方がないと考えましょう。
例えば女性の方で男性を家の中に入れたくないという場合には、事前にガス会社に相談してみましょう。事業者によっては、対応できるかもしれません。
ただ設備点検の資格を持っているのは男性が多いので、対応が難しいことが多いかもしれません。そのような場合には、家族や知人に立ち合いを頼むなどの対策を取りましょう。
定期点検の前に必ず通知がある

定期点検は、外だけではなく屋内に入って点検を行います。
ガス会社のスタッフが突然伺って「家の中に入らせてください」と点検が来ることはありません。
必ず事前にハガキや訪問・電話などで日にちや内容の通知が届きます。通知方法は、事業者によって異なりますが、怪しまれてしまう可能性がある電話や突然の訪問よりも、ハガキ(書面)でのお知らせが多いはずです。
いずれにしても、「前触れなしで点検が入ることはない」と覚えておいてください。
昨今では、ガスの点検を装った強盗などの事件が発生しています。
事前に通知のない点検は通常ありませんので、突然ガスの点検が来たという際には、警戒しましょう。
ガス会社側もそのような事情は理解した上で活動していますので、通常は所定の制服を着用した上で社員証を身に着けています。
心配な方は、事前に「どのような名乗りで、何色の制服、どんな社員証を付けているか」などを確認しておくのが良いでしょう。
もしも事前の連絡がなく「点検」が来たら怪しんでください。
定期点検は立ち合いが必要
プロパンガスの定期点検は、宅内での点検が含まれますので消費者の立ち合いが必要です。
事前に日にちのお知らせがありますので、もしも立ち合いが難しい場合には、その旨をガス会社に伝えましょう。
一般的なガス会社であれば、代替日を提案してくれます。ガス会社としては、点検を行う義務を負っていますので、できる限り顧客の都合に合わせる努力をしてくれます。
また点検に要する時間は、30分程度です。
それほど長い時間を取られるのではありませんので、点検は必ず受けることをお勧めいたします。
どんな人が点検に来るのか
定期点検に来る作業員は、資格を持つ者が行わなければならないことが法令で決められています。
液化石油ガス設備士、高圧ガス保安法第二十七条の二第三項の製造保安責任者免状若しくは同法第二十八条第一項の販売主任者免状の交付を受けている者、業務主任者の代理者の資格を有する者、第七十四条第一項に定める充てん作業者講習の課程を修了した者又は次項に定める要件に適合する者
液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則 第三十六条の三 点検を行うことのできる者より抜粋
LPガスの設備士などの専門家が点検に伺いますので、ぜひ点検してもらいましょう。
保安センター(委託会社)のスタッフの場合も
プロパンガス業界には、保安業務を専門としている保安センターと呼ばれる機関があります。
企業規模の大小を問わず、定期点検を保安センターなど別の団体やグループ会社に委託することは珍しくありません。
定期点検は、予定の日時に不在の顧客がいるなど、イレギュラーな対応をする必要があるため、ガス会社のスタッフが日常業務の傍らで進めるのは難しいのです。
定期点検に関しては、必ずしも「契約しているガス会社のスタッフ」が行うとは限りませんのでご注意ください。
通常、自社スタッフが点検を行わない場合には、その旨も含めて事前にお知らせがあります。