カーボンオフセットLPガスの基本図式
カーボンオフセットLPガスの基本図式

近年のプロパンガス業界では、カーボンオフセットLPガスという用語が登場するようになりました。

カーボンオフセットLPガスとは「ガスが燃焼する時」に発生する温室効果ガスの排出量を実質ゼロにしたLPガスを指します。

頭文字をとって「COLPG」と記載されることもあります。

COLPGは、政府が2020年に「2050年までにカーボンニュートラルを目指す」ことを宣言して以降に誕生したLPガスの種類です。

カーボンオフセットLPガスは、普通のLPガスよりも環境に優しい商品です。以下、カーボンオフセットLPガスについて解説いたします。

カーボンオフセットとは

カーボンオフセットの考え方
カーボンオフセットの考え方

カーボンオフセットLPガスとは、「カーボンオフセット」と「LPガス」を組み合わせた用語です。

カーボンオフセットとは
カーボンオフセットとは、温室効果ガスの排出量をできる限り削減すると同時に、排出される温室効果ガスを吸収する活動により相殺(オフセット)する考えや行動を指しています。

カーボンオフセットについては、別ページで詳しく解説しています。
参照:カーボンオフセットの解説

カーボンオフセットLPガスは、名称の通りカーボンオフセットの考え方に沿って誕生したLPガス商品です。

カーボンオフセットLPガスの仕組み

カーボンオフセットLPガスの仕組み
ガスが燃焼する際に発生する二酸化炭素と同量を相殺する

カーボンオフセットLPガスは、「ガスの質」としては一般的に普及しているLPガスと同じです。

温室効果ガスを実質ゼロにしているかどうか
何が違うのかというと、「排出する温室効果ガス(この場合、二酸化炭素)」を「実質ゼロ」にしているかどうかが異なります。

LPガス(液化石油ガス)は、プロパンガスの名称でも浸透しています。

詳しくは「プロパンガスについて」で解説していますが、プロパンガスは液体の状態で輸送され、各供給場所でボンベから放出された際に気化し、空気中の酸素と結合することにより化学変化を起こし燃焼します。

燃焼する際の二酸化炭素を相殺する
燃焼すると同時に熱を生み出すわけなのですが、この際に二酸化炭素が発生します。
この二酸化炭素をカーボンクレジットの購入などにより相殺したものがカーボンオフセットLPガスです。

事業者は、ガスの燃焼時に排出される二酸化炭素量を計算し、それと同等分のカーボンクレジットを購入することにより実質ゼロにしているのです。

燃焼時に排出される二酸化炭素を供給側が「実質ゼロにするかしないか」が名称の違いとなっています。

カーボンオフセットLPガスを使用する顧客のメリット

カーボンオフセットLPガスを使用するメリット
環境問題に貢献できる。企業であればアピールになる。

端的に言うとガスを使用する側としては、LPガスでもカーボンオフセットLPガスでも何も変わることはありません。なぜならガスの質は同じだからです。

カーボンオフセットLPガスを使用する「顧客側」の直接的なメリットはありません。

使用者のメリットとしては、「環境問題に貢献している」という事実を得ることができます。

環境問題に貢献しているという事実
企業であれば、「当社はカーボンオフセットLPガスを導入しており、環境問題に取り組んでいる会社です。」のように対外的にアピールできるでしょう。
企業にとって対外的な評価はとても重要な要素ですので、カーボンオフセットLPガスを導入することは決して無駄ではないのです。

また顧客側の企業がカーボンオフセットに取り組んでいる場合には、自社が使用しているLPガスは温室効果ガスを排出していないという計算ができます。

一般家庭であったとしても、一人一人が環境問題に取り組む姿勢が重要です。中身は同じだとしても、二酸化炭素排出量を削減することが世界的に求められています。

カーボンオフセットLPガスを供給する企業のメリット

一方で供給するガス会社としても、販売している商品は同じですので直接的なメリットはないと言えるかもしれません。

顧客側と同じく「当社はカーボンオフセットLPガスを取り扱う企業です」とアピールできることがメリットの一つでしょう。

ガスは二酸化炭素を排出するエネルギー
ただ環境意識が高まった近年では、二酸化炭素を排出するガス事業者にとってカーボンオフセットは、メリットの有無に関わらず取り組まなければならない問題です。
特に中規模以上の企業にとっては、対外的な意味も含めて環境問題を無視することは難しい状況で、今後多くの事業者がカーボンオフセットLPガスの導入をはじめると考えられます。

またカーボンオフセットに取り組むにあたり、企業としてはカーボンオフセットLPガスを販売するだけが選択肢ではありません。

名称が似ていますが、カーボンニュートラルLPガスがあります。

カーボンオフセットLPガスの方が安価
カーボンニュートラルLPガスは、カーボンオフセットLPガスと比べて企業側の費用負担が大きいという特徴があります。
比べるとカーボンオフセットLPガスは、金銭的な負担が少ないのです。

カーボンニュートラルLPガスとの違い

カーボンオフセットLPガスとカーボンニュートラルLPガスの違い
カーボンオフセットLPガスとカーボンニュートラルLPガスの違い
冒頭で記載した通り、カーボンオフセットLPガスは「ガスが燃焼する時」に発生する温室効果ガスの排出量を実質ゼロにしたLPガスです。

一方でカーボンニュートラルLPガスとは「原料の採掘時から各供給地点での燃焼時まで」すべての過程において発生する温室効果ガスを実質ゼロにするLPガスを指しています。

カーボンニュートラルLPガスの方が実質ゼロとする温室効果ガスの対象が広いという特徴があります。それに比例して、カーボンニュートラルLPガスの方が導入する費用が高いのです。参照:CNLPGとCOLPGの違い

カーボンオフセットLPガスのデメリット

カーボンオフセットLPガスは料金が高い
業務用を中心に供給されている

ここまでカーボンオフセットLPガスが環境に優しいことを解説しました。それでは、導入する企業や使用する顧客がマイナスになる部分はあるのでしょうか。

カーボンオフセットLPガスのデメリットは、費用面です。

カーボンクレジット購入分が割高
カーボンオフセットLPガスを販売するためには、カーボンクレジットを購入する必要があることは上述しました。
ガス会社としては、同じ中身の商品を供給するにも関わらず、クレジット購入分の支出が増えてしまいます。
つまり必要になる経費が増加しますので、顧客に供給するガス料金も割高にせざるを得ないのです。

一方で顧客側としても同様のデメリットがあります。

中身は同じだけど割高に
同じ商品であるにも関わらず、カーボンオフセットLPガスを使うと料金が割高になってしまいます。
これは、一般家庭の顧客にとって大きなデメリットと言わざるを得ないでしょう。

一般家庭においては、事業者側の都合で一方的にカーボンオフセットLPガスを導入し料金が上がれば、顧客は他社に流れてしまうかもしれません。

そのためカーボンオフセットLPガスは、主に業務用の顧客に対して供給されています。

法人を対象として、料金を相互で確認した上で供給契約を締結しているというのが現在の主流です。

カーボンオフセットLPガスの実情

カーボンオフセットLPガスの現状

カーボンオフセットLPガスという商品は、誕生したばかりです。

日本国内では、2022年から大手LPガス各社がカーボンオフセットLPガスの販売を開始しました。

今後は中小のLPガス事業者に、どこまでカーボンオフセットLPガスが普及するかが焦点になります。

完成したCOLPGを仕入れる
中小のガス会社がカーボンオフセットLPガスを導入する場合、自社でカーボンクレジットを購入するのではなく、卸元の事業者によりカーボンオフセットされたLPガスを購入することになるでしょう。
つまり自社の活動により相殺するのではなく、あらかじめオフセットされた「カーボンオフセットLPガス」という商品を卸供給されることになるのです。

卸元となるENEOSグローブやジャパンガスエナジー、アストモスなどの大企業の動向がカギを握ります。

ガス料金を維持できるかが焦点
現状では、中小規模の事業者がカーボンオフセットLPガスを導入するのは、ハードルが高いかもしれません。
ただでさえ都市ガスよりも料金が高いと言われているプロパンガスが、さらに高くなってしまうとなれば、より一層顧客離れを招く事態になりかねないのです。

LPガス料金は自由料金制ですので、「いくらで供給しなければならない」という決まりはありません。将来的には、一般のLPガスと同等の料金で提供できる可能性も秘めています。

政府は2050年までにカーボンニュートラルを実現することを明言しており、そのための支援策などが様々講じられています。LPガス業界に対しても何らかの対策が講じられることは、十分に考えられます。

今後カーボンオフセットLPガスを導入する費用が軽減されることになれば、一般家庭でも広く普及することになるでしょう。