プロパンガスと都市ガス 機器の違い

日本国内で利用されている主なガスサービスは、都市ガスとプロパンガス(LPガス)の二つに分類されます。

両者は同じ「ガスサービス」なのですが、成分が異なります。ガスの種類に適合した器具を使用しなければ、事故や火災の原因となり得るため注意が必要です。

引越し先へ現在使用しているガス機器を持ち込みたい方、これから購入を予定している方もご参照ください。

都市ガスとプロパンガスは機器が違う

プロパンガスと都市ガスで機器が違う
ガス機器には「LPガス用」「都市ガス用」がある

都市ガスとプロパンガスでは、対応する機器が異なります。同じものをそのまま使うことはできません。

ガスを使用する機器は、コンロや給湯器を代表としてファンヒーターや乾燥機などがあります。参照(外部サイト):リンナイのガス給湯器ラインナップ

器具により対応ガス種が違う
機器の説明欄を見ると、対応ガス種に「LPG」「12A」「13A」と記載があります。
  • LPG=LPガス(プロパンガス)
  • 12A・13A=都市ガス

大手メーカー(リンナイ・ノーリツ・パロマなど)で販売されているガス機器は、同じタイプ(性能)で「都市ガス用」と「プロパンガス用」がそれぞれ販売されています。

「都市ガス・プロパンガス兼用」はない

現在のところ、都市ガスとプロパンガスどちらでも使える機種は販売されていません。

対応のガス種に注意
例えば、都市ガス対応のコンロをそのままプロパンガスのお宅で使用することはできません。逆も同様です。

これからガス機器を購入する方は、建物のガスがLPガスなのか都市ガス(12Aか13A)なのかを事前に確認した上で購入しましょう。

詳しくは下述しますが、都市ガスには12Aと13A以外にも種類があるので注意が必要です。

LPガス用・都市ガス用は型番や価格も同じ
大手メーカーでは通常、都市ガス用・プロパンガス用どちらも同じ価格で販売している上、型番も同じです。
お引越し先のガスの種類に合っている機器を購入するよう注意しましょう。

成分・カロリー・圧力の違い

一般的に普及している都市ガスは、天然ガス(メタン)を主成分としています。
一方でプロパンガスは、プロパンやブタンを主成分としています。

同じ「ガス」サービスではあるものの、中身がまったく違うです。

都市ガスとLPガスは火力が違う
それに伴い都市ガスとプロパンガスでは、カロリー(熱量)や圧力が異なります。プロパンガスの方が都市ガスよりもカロリーや圧力が高くなっています。
それぞれのガスを炎(熱)に変換する際の仕組みが異なるのです。

もしもガスの種類を間違えると

ガスの種類に合わない器具を使用することは、事故や故障の原因となりますので絶対にやめてください。

対応器具を間違えると
例えばプロパンガス用のコンロに都市ガスを使用すると炎が付かない、またはとても小さい炎となります。

逆に都市ガス用のコンロにプロパンガスを使用した場合には、熱量が大きいため大きな赤い炎が発生するでしょう。赤い炎は、不完全燃焼を起こしている際に発生する炎です。定常燃焼している炎は青色です。

不完全燃焼が起こると、人体に有毒な一酸化炭素が発生するため大変危険です。

ガスの種類が合っているか不安なときは
プロパンガスと都市ガスどちらも共通して、開栓時に必ず消費者立ち合いの元で設備点検が行われます。
お持ちの機器とガスの種類が合っているか不安な方は、開栓時など使用開始する際にスタッフに確認しましょう。
参照:LPガス供給開始時点検

対応規格を確認するには

ガス器具ステッカー
ガス機器ステッカー例・東京ガスHP

すでにお持ちのガス機器がどの規格に対応しているのか見分けるには、貼り付けられているステッカーを確認しましょう。

もしもシールで確認ができない場合には、型番で検索をするまたはメーカーや販売店に問い合わせるなどの方法があります。

都市ガスとプロパンガス機器を間違えた場合

もしもコンロなどの機器を都市ガスとプロパンガスで間違って購入してしまった場合には、部品交換や改造などにより使用できる可能性もあります。

ただし、部品や作業に対する費用がかかるので、購入した店舗に相談して交換を依頼することをお勧めいたします。

費用をかけて対応ガス種を変更するよりも、返品や交換できる状況であればそちらの方が良いでしょう。改造については、下記で解説しています。⇒対応のガス種を変更する

都市ガス・プロパンガスの種類

都市ガスは複数の種類がある
都市ガスは器具を買うときに注意

ガスには複数の種類があることをご存知でしょうか?

特に都市ガスに関しては、上述した13A・12Aだけでなく、いくつもの種類に分かれているため対応機器を確認する必要があります。

プロパンガスの器具は一種類

一般家庭向けに供給されているプロパンガスは、「い号液化石油ガス」という名称で成分が統一されているため、器具も「LPG用」の一種類のみです。

厳密には、LPガスも工業用の「ろ号」「は号」があるのですが、市販されている家庭用の器具に関しては統一されています。

引越し先がプロパンガス(LPガス)供給であれば、「LPG対応」の器具を用意しましょう。

現在プロパンガス用の器具をお持ちで、引越し先がプロパンガス供給の物件であれば、全国どこでも器具はそのまま使うことができます。

都市ガスの規格は13A・12Aだけではない

一方で都市ガスの種類は、13Aや12Aだけではありません。都市ガスは、7グループの13種類に分類されています。

都市ガスの種類と熱量
規格熱量
13A10,000 ~15,000 kcal/㎥
12A9,070 ~11,000 kcal/㎥
6A5,800 ~7,000 kcal/㎥
5C4,500 ~5,000 kcal/㎥
L1(6B、6C、7C)4,500 ~5,000 kcal/㎥
L2(5A、5B、5AN)4,500 ~5,000 kcal/㎥
L3(4A、4B、4C)3,600 ~4,500 kcal/㎥

現在、多くの都市ガス事業者では、13Aが供給されています。

一部の事業者や地域では、12Aのガスが供給されているのですが、順次13Aへ移行しているため数は多くありません。これは、国が熱効率に優れている13Aの普及を推奨しているからでもあります。

13Aと12Aは兼用できる
ガス機器に関して、現在新品で販売されている機種は、13Aと12A兼用できるタイプがほとんどです。13Aと12Aは、熱量に差があるものの、成分は非常に似ているため同じ機器が使えるのです。
新たに新品の機器を購入する場合には、13Aと12Aを気にする必要はありません。

引越し先の都市ガスを予約する(外部サイト):都市ガス料金比較サイト

レアなガス種「6A」「5C」など

13Aと12A以外の種類に関しては、古くから供給されているガス種で熱量が低いものです。

製造ガス
6A以下のガスは、製造ガスとも呼ばれています。
13Aの都市ガスは、天然ガスを原料としメタンがが主成分となっています。一方で製造ガスは、石炭やLPガスなど別の成分を多分に含んでいます。

天然ガスは、千葉県新潟県秋田県など日本国内でも産出される上、排出される二酸化炭素の量が少ないなどのメリットがあります。かつて都市ガスの成分は各社ごとにバラバラだったのですが、2000年以降から国の主導により統一が進められました。

現在では、極めて限られた地域でのみ13A・12A以外の都市ガスが供給されています。

13A・12Aではないガスだったら
これらのガスを使用する機器は、通常市販されているものは対応していません。
もしも都市ガスの種類が13Aや12A以外であった場合には、部品を交換するなどして、熱量を調整する必要があります。

特に新たに引越しする先で都市ガスを使用する場合には、注意が必要です。引越し先のガス会社に問い合わせるのが良いでしょう。

東京ガス・大阪ガス・東邦ガス・西部ガスは13Aか12A

東京ガス・大阪ガス・東邦ガス・西部ガスの大手4社を含めてほとんどの都市ガス会社は13Aか12Aなのですが、事業者や地域によっては移行していない可能性があります。

詳しくは、ガス事業者に尋ねるのが良いでしょう。基本的には、開栓の連絡をした際に必ず、ガスの種類が特殊であることを知らせてくれるはずです。

数字の違い

「13」や「12」などの数字は、1㎥あたりの発熱量を表しています。

12Aよりも13Aの方が発熱量が多い、つまり発熱効率が良いのです。

以前は12Aも広く供給されていたのが、13Aに移行しているというのは、より発熱効率が良い、つまりガスの使用量が少なくて済む種類へ進化しているということです。

アルファベットの違い

それでは13Aなどのアルファベットは、ガスの燃焼速度を表しています。

A【遅い】←B【普通】→C【速い】

コミュニティーガスの物件

「ガスの供給方法」としては、都市ガスとプロパンガス以外にコミュニティーガスがあります。

一定の範囲に限定して供給するガスの仕組みなのですが、詳しくは別ページで解説しています。

コミュニティーガスの中身は、通常プロパンガスが使用されています。

通常のコミュニティーガスはLPG
もしも建物がコミュニティーガスであった場合には、プロパンガス用の機器を用意してください。
ただし例外があり得ますので、購入する前に該当のガス会社に確認するのが良いでしょう。

ガスの種類が合っていなかったら

ガス機器の対応を確認するのは、例えば

  • すでに所有しているコンロを引越し先で使いたい
  • 知人からコンロを譲り受けた
  • 今の住居でプロパンガスから都市ガスに変更する

このような状況が考えられます。

ガス器具の対応を確認する方法は、上記した通りです。

それでは、対応していなかった場合、どうすれば良いのでしょうか。

ガス機器を買い替える

最も確実なのは、コンロなどのガス機器を使用するガス種に合わせて買い替えることです。

お持ちのガス機器が古いようでしたら、以下のように改造を検討するよりも購入した方が安いことがほとんどです。

特にテーブルコンロなど、本体価格が安い機器に関しては、新しく買うことをお勧めいたします。

メーカーに改造を依頼する

購入費用を抑えたい方は、機器のメーカーに改造を依頼する選択肢もあります。

本体価格が高い器具は改造を検討
メーカーは「都市ガス用」と「プロパンガス用」それぞれの機器を製造しているので、部品を交換することで対応のガス種を変更することができるのです。業界ではこれを「改造」と呼んでいます。
例えばビルトインコンロなど、本体を買い替えるのは高いと考える方は、メーカーまたはガス会社に改造の相談をしてみましょう。

改造の費用

ガス機器の対応種類を変更する場合、まず改造するための部品が必要になります。

部品代と作業費用
機種によって部品代は様々ですが、大まかに1~5万円程度かかります。
さらに改造作業を依頼した場合には、作業費がかかります。作業費もケースバイケースですが、数万円は必要でしょう。

ガス機器の対応を変えるには、数万円単位の費用がかかると認識してください。

上述しましたが、本体代金が安いテーブルコンロなどは、改造を頼むよりも購入した方が良いでしょう。

逆に本体価格が高いビルトインコンロや給湯器などは、改造することを検討しても良いかと思います。

自分で改造するのは難しい

それでは、部品だけ仕入れて自身で改造することはできるのでしょうか。

結論から言うと、自身でガス機器の改造をすることはお勧めできません。

自身での改造は自己責任
ガスの種類を変える作業自体は、ガス主任技術者程度の知識と経験、さらに部品を持っていれば、自分で行うことも不可能ではありません。
ただ仮に自分でコンロなどガス機器の改造ができたとしても、その後の保証がされず、事故が発生した際にはすべて自己責任になりかねません。

ガス会社に依頼した場合、ガス会社は顧客に対する安全義務を負っていますので、定期点検や開栓時点検などを行い、事故を防ぐ努力をしなければなりません。メーカも同じく、責任を持って改造してもらえます。

また万が一、作業に不備があった際には、人命にかかわる事故に繋がる恐れがあります。

さらに通常のメーカーは、改造部品を個人売りはしていないかと思いますので、部品を手に入れること自体が困難でしょう。

このような理由から、自分でガスの種類を変える作業を行うことはお勧めいたしません。

プロパンガスの戸建住宅に都市ガスを引き込む

引越しとは別で、現在プロパンガスを利用している方が、都市ガスを新たに引き込むケースが考えられます。

当然ながらこの際にも、使用中のプロパンガス機器を都市ガス用にしなければなりません。

都市ガスの新規引込
購入するか改造するかという選択になるのですが、この場合には、都市ガス会社が協力してくれるでしょう。
都市ガス会社は、基本的に新規導入を推奨していますので、できる限り費用がかからない提案をしてくれるはずです。

都市ガスの新規引込を検討している方は、地域を管轄している都市ガス事業者(一般ガス導管事業者)へ問い合わせてみましょう。