このページでは、70戸以上の大型集合住宅のプロパンガス(LPガス)について解説しています。
ただ供給する建物が70戸以上の大型集合住宅になると、管轄する法律が「ガス事業法」に変わります。
管轄する法令がガス事業法になることで、料金体系やサービス内容・ガス会社の変更方法などが一般のプロパンガスとは異なります。
「ガス代が高い」などの理由で事業者の変更を検討している物件オーナー様や理事会などの管理者様は、ご参照ください。ガス会社切り替えのご相談も承っています。
目次
LPガス供給で70戸以上の集合住宅は「コミュニティーガス」
都市ガス(一般ガス)や特定ガス(コミュニティーガス)について取り決めているガス事業法では、このように定めています。
この法律において「小売供給」とは、一般の需要に応じ導管によりガスを供給すること(政令で定める簡易なガス発生設備(以下「特定ガス発生設備」という。)においてガスを発生させ、導管によりこれを供給するものにあっては、一の団地内におけるガスの供給地点の数が七十以上のものに限る。)をいう。
ガス事業法 第二条(定義)
LPガスが供給されている70戸以上の集合住宅は、ガス事業法の「特定ガスの小売供給」の定義に該当するため、液石法ではなくガス事業法の管轄になるのです。
「70戸以上の集合住宅にプロパンガスが供給されている場合には、コミュニティーガス扱いになるので、ガス事業法の適用範囲になる」とご認識ください。
特定ガス事業は、以前は「簡易ガス」でしたが、現在では「コミュニティーガス」と呼称されています。
管轄する法律が異なるため70戸以上の集合住宅では、一般の住宅とは様々な面が異なります。
戸建住宅の団地で合計70戸以上にプロパンガスを集中供給(導管による供給)している場合にもコミュニティーガスの扱いになります。
参照:戸建住宅のコミュニティーガス
LPガスとコミュニティーガス「品質は同じ」
- 「一つの供給設備から供給する消費者の数が70以上」であればガス事業法による管轄
- 70戸未満の場合には、液石法による管轄
都市ガスやプロパンガスとは成分が異なる「コミュニティーガス」というガスの種類がある訳ではありません。コミュニティーガスの中身は、一般的にはプロパンガスなのです。
コミュニティーガスの建物に供給されている中身はプロパンガスなのですが、建物の戸数が違うことで管轄する法令が変わります。
液石法とガス事業法の違い
液石法とガス事業法では、どのような点が異なるのでしょうか。
まずガスを利用する顧客としては、機器は同じで使い勝手などに違いはありません。
液石法管轄の一般的な戸建住宅や集合住宅とは違う対応をしなければならないため、主にガス会社側に注意が必要といえるかもしれません。
ただ顧客側にも少なからず違いはあります。
管轄する法令が違うことで様々な面で通常のプロパンガスと異なるのですが、ここでは重要な点を紹介します。
コミュニティーガス料金は公平
一般的なプロパンガスは、自由料金制です。
液石法で料金に対しての規制がされていないため、ガス会社としては許諾などを得る必要がなく、自社の意思で自由に料金を決めることができます。
それ故にプロパンガス料金は、理不尽に高値にされてしまうお宅も珍しくないのです。
一方でコミュニティーガスの料金は、原則として事前認可制です。
顧客に適用するガス料金プランや供給場所を、事前に経済産業省に提出しなければならないのです。
「ガス料金が公平で、とんでもない高値にはなっていない」という点で安心することができるのが大きなメリットです。
コミュニティーガス料金が安いとは限らない
コミュニティーガスの料金は、事前許可制です。従って「法外に高く設定されている」可能性は極めて低いと考えられるでしょう。
しかし見方を変えてみると、「とても安く設定されている」とは限らないので注意が必要です。
プロパンガス事業者としては、数十戸の顧客を確保できるため、大型の集合住宅はとても魅力的なお客様なのです。大型物件のプロパンガス料金の安さについては、分譲マンションの記事で事例を交えて紹介しています。
参照:大型集合住宅のプロパンガス料金
物件にもよりますが、コミュニティーガス料金が事前許可制とはいえ、比較的高めに設定されている事例もあります。
もしも大型の集合住宅にお住まいで「ガス料金が高いのではないか?」「現在よりもさらに安くできないか?」と感じている方がいらっしゃいましたら、当社でご相談を承っています。
ガス会社を変更することにより、現在よりも安くできるかもしれません。
設備投資が難しい
通常のプロパンガスでは、集合住宅所有者に対して給湯器などの設備投資をするサービスが提供されることがあります。
一方で都市ガスやコミュニティーガスでは、特定の顧客のみを特別扱いすることは禁止されています。
ガス事業法では、公平性が求められているためです。
物件オーナーの特典で設備投資について解説していますが、70戸以上の物件では、このようなサービスが難しくなってしまいます。
コミュニティーガス物件の切り替えでは、「ガス料金が安くなるかどうか」のみに絞って見積もりが行われるのが一般的です。
ただし「特別扱いをしない形でサービス提供する」のであれば特典を付与することができることもあります。事業者の方針によっても対応が異なりますので、詳しくはお問い合わせください。
コミュニティーガス会社を変更する
コミュニティーガスの集合住宅で事業者を切り替えるには、一般のプロパンガス住宅とは勝手が異なります。
まずガス会社がその物件に供給するためには、特定ガス事業者(コミュニティーガスの事業者)として認可を得ていなければなりません。
これは、通常のプロパンガス小売事業とは異なる認可です。
さらに変更手続きに関しても、関係省庁に提出する書類など、様々なやり取りが必要になります。
オーナーなど消費者側の手続きとしては、面倒な作業がある訳ではないのですが、ガス会社側に制約があるのです。
小規模のプロパンガス事業者では対応が難しくなっており、ある程度の事業規模を持つガス会社でなければコミュニティーガスの変更はできません。
物件オーナーや理事会の方、管理会社の担当者様はもちろん、一般の入居者の方でもお気軽にご相談ください。
適用される料金は建物により異なる
プロパンガスは物件により適用される料金が異なりますが、コミュニティーガスでも同様です。
実際にその物件に適用される基本料金や従量単価は、建物によって異なります。「〇〇ガス会社だから料金は〇〇円」と決まっているのではありません。
変更先のガス会社はその場合、バルクを新しく用意または買取しなければなりません。敷地内のガス導管やベーパーライザー(強制気化装置)などバルク以外の供給設備についても同様です。
買い取るか交換するかは交渉次第なのですが、ガス会社はそのような費用を加味した上で料金を決めて関係省庁へ届け出ます。
「現状の料金が高いのかどうか」「より安い提案できるかどうか」は、物件により個別で見積もりすることになります。ガス代を少しでも安く抑えたいと考えている方は、明細をご用意の上でご相談ください。
コミュニティーガスかわからない
- 契約書を確認する
- 戸数を確認する
- 管理者に確認する
- 供給中のガス会社に確認する
土勢育孝
株式会社new create 代表取締役
執筆者
このページの記事は、私が執筆しました。
プロパンガス関連業務に10年以上携わっております。
これまで、多くのオーナー様からご相談を承っています。物件に合わせた提案をさせていただきますので、お気軽にご相談ください。
お電話でご相談いただく際には、私をお呼び出しください。