経済産業省は、2022年度第2次補正予算案に計上された「電気・ガス価格激変緩和対策事業」で、ガス代と電気代を値引きする小売事業者の公募を11月末に開始します。

同事業には、ガス6203億円、電気2兆4870億円の総額3兆1074億円が計上されました。

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今回の支援内容は、消費者に対する直接的な現金給付などではなく、ガス・電気事業者に対する支援となっています。

ガス・電気代を割り引くことにより間接的に国民の負担を軽減する狙いとなります。

対象となるサービスは

  • 都市ガス
  • 低圧電力
  • 高圧電力

の3つ。

LPガスに関しては、「ガス代を割り引く」という支援から外されています。

LPガス関連の支援内容としては、

  • 流通コスト等の低減を支援する「小売価格低減に資する石油ガス配送合理化補助金」に138億円
  • 需要家側の燃料備蓄を推進する「小売価格低減に資する石油ガス設備導入促進補助金」に16億円

が計上されており、いずれも事業者への支援という形になっています。

支援金額としては、電力や都市ガスと比べると非常に少ない上、「流通コスト等の~」という支援内容は、事業者の負担を軽減するものであり、消費者に対してのガス料金が下がることを期待するのは難しいと考えられるでしょう。「料金が今以上に上昇しないこと」を目的としていると捉えられます。

これはLPガスに関しては、原料となるプロパン・ブタンの輸入価格が下落し始めており、今後上昇する見込みが少ないこと、さらに事業者数が1万7千社ほどあることから、国から事業者、事業者から消費者というルートで補助を行うことが実質的に難しいという背景があります。

LPガスの輸入状況

LPガスの主な原料であるプロパンとブタンは、サウジアラビアなど中東アジアを主な輸入先としています。

輸入の過程でロシアと直接関わる都市ガスと比べると、確かにLPガスは輸入の段階で戦争の影響を直接的には受けていません。

またサウジアラビアからの輸入価格の指標となるサウジCPについては、今年春頃から下落をはじめていて、今後再び上昇する見込みは低いと考えられます。

ただ、サウジCPの価格は、昨年から急激に上昇しており現在も高騰した状態を維持しています。数年前と比べると、輸入価格は2倍近い金額にまで上がっているのです。

それに伴い、日本国内のLPガス小売料金に関しても、9月まで15ヶ月連続で値上がりしており、且つ10か月連続で過去最高値を更新していました。(石油情報センター公表の平均価格)

LPガスが、ガス代割引の支援対象から外れるというのは、どうしてでしょうか。

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各LPガス事業者に支援を行うのは難しい

ただ、実際にLPガスにガス代割引の支援を行うのは、難しいという実情もあります。

都市ガスの一般ガス導管事業者数は、国内で2百数十社であるのに対し、LPガス事業者は1万7千社ほどあります。

1万7千の事業者それぞれに支援金を出してガス代を割り引く措置を講じるというのは、実質的に不可能であると考えられます。仮に実施するとしても管理する側がとてつもない労力を強いられることになってしまいます。

経済産業省は、11月8日に各自治体に向けて、「地方創生臨時交付金のLPガス料金上昇抑制に向けた活用のお願い」という通達を出しています。

これは「LPガスの料金上昇を抑えるために、地方創生臨時交付金を使うこともできますよ」という内容になっています。

ただ、実際にどこまで活用される可能性があるのか不透明である上、あくまでも価格上昇を抑える目的であるものです。直接的に消費者に対し支援を行うのは難しいでしょう。

LPガス利用者の中にも、ガス代が上がって困っている方はたくさんいらっしゃいます。経済産業省の方々には、今一度LPガス需要家の方に向けた支援をご再考いただきたいと考えます。

当社では、LPガス会社の切り替え相談を承っています。戸建て住宅にお住まいで、ガス代が高くて困っているという方は、お気軽にご相談ください。