サウジCPの解説

このページでは、日本のLPガス価格に関係する「CP」について解説します。

CPは、「サウジCP」と表記されることもあり、CP価格はエネルギー関連のニュースなどで使用されています。

日本のエネルギー価格に大きく影響するCPですが、どのような言葉なのでしょうか。

CPとは

CPとは、サウジアラビアの国営企業である「サウジアラムコ」が輸出先に対して提示する取引価格です。CPは「Contract・Price」の略です。⇒サウジアラムコ公式HP(海外サイト)

サウジアラムコ社が提示する取引価格
サウジアラムコ社は、月に一度、月末に輸出相手に対して【プロパンとブタンをいくらで取引するのか】を通知しています。日本の輸入会社に対しても、日本向けの価格がいくらであるかということを毎月提示するのです。
この価格をCPと呼んでいます。
LPガスの原料はプロパンとブタン
LPガスは、プロパンとブタンを主な原料としてつくられています。
LPガスが通称「プロパンガス」と呼ばれるのは、このためです。
成分に関しても法律により含有率が決められているため、日本で流通しているLPガスは、どれも基本的には同じものです。
参照:LPガスの解説

サウジアラビアは、原油(石油)をはじめとして原油を精製する過程で産出されるプロパンやブタンなどガス関連資源の輸出大国です。国有企業であるサウジアラムコの原油生産量や輸出量は、世界最大を誇っています。

サウジアラビアの王族が世界有数の富豪であるのは、莫大な原油の利権を握っているからなのです。

全世界におけるエネルギー市場に大きく影響を与えている国であり、石油(ガソリン・灯油)やLPガスの価格に大きな影響力を持っています。

サウジアラビアから世界各国に膨大なエネルギー資源を輸出しているため、日本をはじめとしてアメリカや中国、ヨーロッパにも拠点を持っています。⇒アラムコ・ジャパン

CPは日本のプロパンガス料金に強く影響

CP価格は国内のLPガス料金に影響する
CP価格は国内のLPガス料金に強く影響する

日本は、エネルギー資源に乏しい国です。

都市ガスの主原料となる天然ガスは一部地域で産出するものの、LPガスに関しては、ほぼすべてを輸入に頼っています。

中東アジア産のLPガス
日本国内で利用されているLPガスの多くは、サウジアラビアをはじめとした中東アジア産が占めているのです。
つまりCPの価格は、日本国内のLPガス小売料金にも大きな影響を与えています。

サウジCPが低くなれば日本国内のLPガス料金も下落傾向になり、逆に上昇すれば値上げされる可能性が高くなります。⇒アストモスエネルギーのCP解説と予想

CPは輸出国の港で取引される金額

CPは、「輸出国の港で渡される価格」を示しています。取引される単位は、【$/t】です。

つまりCPは、サウジアラビアなど輸出港で取引される1トンあたりの金額であり、米ドルで取引されるのです。

フレート

海外の港で購入した資源を日本国内までタンカー(大型船)で運びます。中東から出荷されて日本まで運ぶタンカー運賃は「フレート」と呼ばれ、こちらも毎月変動します。

また日本国内で卸販売するには、円に変換する必要がありますので、為替レートも大きく影響しています。

日本のLPガス元売り事業者は、これらの数値を勘案して卸価格を決めています。CPだけではなく、フレートや為替レートも重要な指標となるのです。参照:大阪ガス・CP価格推移表

2021年からのCP高騰
2021年頃から世界的なエネルギー危機を迎えました。CP価格もこの頃、かつてない程に高騰しました。
この状況を受けて日本国内のLPガス卸価格や小売料金も値上げせざるを得ない状況に陥ります。
LPガスをご利用のお宅では、2021年から2022年にかけてガス会社から値上の通知を受けた方が多いでしょう。

CP以外の指標【モントベルビュー】

日本国内のLPガスの流通価格
CPだけでLPガス価格が決まるわけではない

かつて日本で消費するLPガスのほとんどは、サウジアラビアをはじめとした中東アジア諸国から輸入していました。

ただ2013年にアメリカでシェール革命が起こり、2016年には新パナマ運河が開通したことなどが影響して、中東アジア一辺倒であった勢力図が変わってきています。

モントベルビュー(MB)
近年では、アメリカやカナダ・オーストラリアからのLPガス輸入量が増加しており、必ずしもサウジCPだけが日本のLPガス流通価格に影響を及ぼしている訳ではありません。
北米産LPガスの価格はモントベルビュー(MB)と呼ばれており、アメリカのOPIS社が発表しています。

MB価格は、CPと同じく日本国内のLPガス料金の指標となっています。

MBの解説

ジャパンガスエナジーのCPとMB価格推移表

CFR

日本国内に輸入されたLPガスは、元売り事業者(ENEOSグローブやアストモスエネルギーなど)から取引先各社に卸販売されることになります。

この時、「いくらで卸販売されるのか」に関しては、上述したCP(サウジCP)やMB(モントベルビュー)、さらにフレート(タンカー運賃など輸送費)や為替レートを加味して総合的に決められます。

これらの数値を総合して決められた卸売の指標価格がCFR(cost and freight)と呼ばれています。

CPの決め方は非公開

CP価格の決め方は非公開

サウジアラムコ社は、独自の価格決定方式によってCPを決めています。

算出方法は非公開
「マーケット情報や原油・製品市況等を参考に総合的に判断」とされていますが、具体的な計算方法は公開されていません。
それぞれの取引相手と話し合いで決められているのではなく、サウジアラムコの独断、いわば言い値で決められているのです。

かつてサウジアラビアからの輸入に頼り切りであった時代には、売り手側が非常に優位でした。

しかし輸入のバランスが変わった現在では、比較的柔軟な姿勢で金額が決められるようになったといわれています。参照:エネ研・石油情報センターの資料

石油と同じ値動き

LPガスの原料となるプロパンやブタンは、原油を精製する過程で生まれる副産物です。従ってプロパンやブタンの輸入価格は、一般的に石油と同じ値動きをします。

つまり日本国内のLPガスとガソリンや灯油の取引価格は、まったく同じではありませんが基本的に同じような推移をするのです。

例えばLPガスや灯油の値段は高騰しているけど、ガソリンだけ安くなることはありません。

近年のCP価格推移

上述したエネルギー危機の時期(2021~2022年頃)を経て、現在のCPは落ち着きを取り戻しています。

ただ価格帯としては以前の水準には戻っておらず、広く見ると高値のまま推移している状況です。今後どのような価格になるのかは、世界情勢次第で変わることになります。

プロパンガス料金は、原料を海外から輸入しているので価格の上下が激しいという特徴があります。そのため都市ガスと比べて高めの料金に設定されやすいという事情があるのです。参照:サウジCPの推移