プロパンガスの標準料金について解説
プロパンガスの標準料金について解説

プロパンガス事業者のホームページを見ると、多くの企業が「標準料金」を掲載しています。

名目は「一般料金」「LPガス料金表」など異なることもありますが、自社のホームページを持つガス会社であれば、具体的な金額を記載することが増えています。

プロパンガス会社の「標準料金」とは、どのような料金なのでしょうか?

このページでは、標準料金とは何なのか、また掲載されるようになった理由を解説しています。尚、記載内容に関しては、筆者の私見も交えていますのであらかじめご承知おきください。

LPガスの標準料金とは?

標準料金が適用されるとは限らない
プロパンガス料金はガス会社が自由に決められる

標準料金とは、その事業者が「標準的に提供している料金メニュー」を指しています。

ポイントとしては、「標準的に」という部分です。

つまりそのガス会社を契約を結ぶとして「標準料金が必ず適用される」のではありません。

標準料金が適用されるとは限らない
例えば戸建住宅に住んでいる方が他社から切り替えてそのガス会社と契約を結ぶ際には、「標準料金よりも安い金額」が適用されるのが一般的です。
まずは「必ずしも標準料金が適用される訳ではない」ことをご理解ください。

通常プロパンガス事業者は、標準料金を高めに設定しています。金額が高い上、各社でバラつきがあるのがおわかりいただけるかと思います。

プロパンガス各社は、目安となる金額を標準料金として掲載し、状況に応じて金額を下げるなどの対応をするのが一般的です。

なぜ標準料金が掲載されているのか?

行政からの指導で標準料金が掲載されている
資源エネルギー庁が標準料金の掲載を指示

標準料金は、必ずしも適用される金額とは限らないということを上述しました。

それでは、なぜ適用されるかわからない標準料金を公開しているのでしょうか?

2017年の行政からの発布がきっかけ
標準料金が公開されるようになったのは2017年からです。
2017年2月に経済産業省・資源エネルギー庁から「液化石油ガスの小売営業における取引適正化指針」が発布されました。

この中の第3項(1)標準的な料金メニュー等の公表で次のように記載があります。

液化石油ガス販売事業者は、一般消費者等が料金水準の適切性を判断しやすくなるよう、自社の標準的な料金メニュー(例えば、液化石油ガスの一定使用量ごとに発生する料金や使用量に係わらず発生する基本的な料金等)及び一般消費者等による平均的な使用量に応じた月額料金例(以下「標準的な料金メニュー等」という。)を公表する必要がある。
標準的な料金メニュー等の公表は、不特定多数の一般消費者等が自由に閲覧できるよう、自社のホームページを有する者は当該ホームページに、それ以外の者は店頭の見えやすい場所に掲示するなどの方法により行う必要がある。
(中略)
また、実際には適用されていない料金メニューを、標準的な料金メニュー等として公表した場合には、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)で禁じている不当表示となるおそれがあることに留意が必要である。

液化石油ガスの小売営業における取引適正化指針より抜粋

※液化石油ガスとは、プロパンガス(LPガス)のこと

LPガス事業を管轄する資源エネルギー庁から「標準的な料金メニュー」と「月額料金例」をホームページ上で公開するように要請されたのです。

義務ではなく指導
料金メニューと料金例の公表は、あくまでも指導であり強制力を持つ義務ではありません。
しかし一般的なLPガス事業者であれば、現在ではすでに料金を公表しています。
もしもホームページがあるガス会社で料金メニューを公表していなかったとしたら、行政の指示に従っていないと判断することができます。

LPガス料金の不透明さにテコ入れが入った

プロパンガス料金は使い分けされている
料金プランが統一されていない

プロパンガス料金は、自由料金制です。つまり顧客に対してどの料金メニューを適用するかは、ガス会社が自由に決めることができるのです。

多くのプロパンガス事業者は、「都市ガスのように、すべての顧客に対し統一した料金メニューを適用」ではなく、「それぞれの顧客に対して、状況に応じて異なる料金メニューを適用」しています。

顧客は適用される料金がわからない
行政からの指導が入るまでは、料金表がどこにも記載されておらず、ガス会社はその顧客に合わせて紙などで提案していました。
顧客側としては、その事業者と契約したら基本料金や単価がいくらになるのかを、事前に知ることが難しかったのです。

特に集合住宅など「ガス会社を選ぶことができない顧客」にとっては、ガス代の計算ができないのは大きな問題でした。
参照:集合住宅のプロパンガス

端的に言えば、プロパンガス料金は「非常に不透明」であったのです。

このような状況を少しでも改善するため、行政から目安となる料金メニューを開示するよう指示が入りました。

標準料金を公開する意味はあるのか
標準料金が適用されるとは限らない訳なので、どこまで透明性が増したのかという疑問は残ります。ただ顧客としては、少なくとも「目安となる料金」を知ることができるようになったのです。

標準料金は高めに設定される

標準料金は高めに設定されている
標準料金は高めで、必要に応じて下げて対応する

上記した取引適正化指針の中で「実際には適用されていない料金メニューを、標準的な料金メニュー等として公表した場合には、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)で禁じている不当表示となるおそれがある」と記載があります。

つまり実現が難しいような安い料金を掲載する行為は、違法になる恐れがあるのでやめてくださいということです。

標準料金は高めに設定されるのが通常
プロパンガス事業者の多くは、標準料金をかなり高めの金額に設定しておいて、そこから必要に応じて安い料金を提案するというスタンスをとっています。
料金プランの使い分け
わかりやすい例を挙げると、一戸建ての顧客で他社から自社へ切り替えの営業をする際、当然ながら料金を安くしなければなりません。
その場合には「標準料金よりも大幅に安い新規の料金で提案する」ことになるのです。

またホームページ上で料金を公表するという点で、標準料金は高めの金額にせざるを得ないという側面もあります。

標準料金を高めに設定せざるを得ない事情
自社の顧客も見るホームページ上に安い料金を掲載した場合、標準よりも高い顧客が見た際に「なぜ標準料金よりも高いのか」となってしまうでしょう。
また引っ越し前に料金を調べた顧客が、標準料金を目安として入居した際、実際に適用される料金が標準よりも高かったとしたら「話が違う」となってしまいます。「標準料金よりも安かった」のであれば、文句を言う人はいないでしょう。

一般的に標準料金は、「そのガス会社が扱っている料金メニューの中でも、かなり高めの金額が掲載されている」と捉えられます。

標準料金を参考にして良いのか?

標準料金は参考にできるのか?
ガス会社を変えられるかどうかがポイント

それでは標準料金とは、どのように解釈すれば良いのでしょうか?

標準料金とは「なにか理由がない限り、それ以上の金額が適用されることはない」と捉えて良いでしょう。

標準料金を参考にするかしないか
  • 集合住宅にお住まい・引っ越し予定など「プロパンガス会社を選ぶことができない環境の方」は、標準料金を目安にして「これくらいの料金設定がされる」と認識して良いでしょう。
  • 戸建住宅で持ち家にお住まい・引っ越し予定など「プロパンガス会社を選ぶ(変更する)ことができる環境の方」にとっては、標準料金は目安になりにくい金額といえるでしょう。

標準料金の掲載を促すことになった背景として、集合住宅などガス会社を選ぶことができない方からの料金相談が多発していたことがあります。

2017年当時に資源エネルギー庁から発行された改正液石法省令等・取引適正化ガイドラインにも記載がある通り(9ページ目)、集合住宅においては建物で決められたガス会社と契約するしか選択肢がないため「料金が思ったより高かった」などのトラブルが発生していたのです。

標準料金とは、主に「ガス会社を変更することができない」方に向けた金額と考えられます。

標準料金を目安にすべき環境
  • アパートなどの集合住宅
  • 賃貸の戸建住宅で、オーナーからガス会社が指定されている
  • 持家の戸建住宅でガス会社の競合がない地域
このような環境にお住まいまたは引っ越し予定の方は、標準料金を見て目安とすべきでしょう。

つまりプロパンガス事業者を変更することができない・難しいため、ある程度高めの料金を想定しておくべきなのです。

標準料金よりも安く利用できる環境
反対に持ち家の戸建住宅など、ガス会社を変更できる方に関しては、標準料金よりも安い金額が適用できることが一般的ですので、あまり参考にならないと考えられるでしょう。
料金が高かった場合には、他社に切り替えるという選択が可能だからです。
むしろ「標準料金に近い金額だったら、もっと安く利用できる」と考えて良いかもしれません。

標準料金と最安値料金は違う

標準料金は見せるための金額
新規で切り替える方は、標準料金が適用されるのではない

プロパンガス会社のホームページは、様々な人が閲覧します。

会社を変えようと考えている方はもちろん、ライバルのガス会社や契約している顧客が見ることがあるでしょう。

標準料金は、全ての方が見る前提で設定されている金額なのです。

切り替え用の料金は公表されない
このウェブサイトで掲載している最安値の料金は、その会社に乗り換えたい方、いわば新規のお客さま向けの金額です。
当然ながらガス会社は、新しい顧客を獲得したい考えがありますので、ぎりぎりまで利益等を削った料金を提示することになるのです。
この金額は、ガス会社のホームページには通常公開されていません。
参照:プロパンガス料金表
プロパンガス料金は使い分けるのが一般的
それぞれのガス会社は、自社の利益を考えて料金を設定しています。
全ての顧客に対して最安値の単価で提供してしまったら、経営が圧迫されて満足なサービスが提供できない事態に陥ってしまうでしょう。
一般的なプロパンガス事業者は、状況に応じて料金プランを使い分けているのです。

他社から切り替えるお客様には、標準料金よりも安い金額が適用されます。

標準料金を見て「このガス会社と契約したら、この料金が適用される」と判断するのは間違いです。

安い料金でプロパンガス会社を切り替えたい方は、当社でご相談を承っています。お気軽にご相談ください。

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プロパンガス料金は交渉の余地がある

顧客に適用する料金プランの決め方は、各社の方針により大きく異なります。

プロパンガスは交渉や切り替えが有効
ガス代を安くしたいとお考えの方は、企業が一番安い料金を公開していない以上、料金交渉の余地があると考えられるでしょう。
事業者の切り替えにより安くできることも同様に、ガス会社がプランを使い分けていて最安値で提供している可能性が低いからです。

「交渉や切り替えをしないと安くならない」のは、ライフラインのサービスとして疑問符が残ります。ただプロパンガスは「公共サービス」ではないので、現在のところは企業の自由が許されています。

料金を使い分けていない事業者も

標準料金を基準として料金プランを使い分けていることを上述しました。

ただ必ずしもすべてのLPガス事業者が使い分けをしているとは限りません。

例外で料金を統一している事業者も
実際にいくつかのプロパンガス会社は、都市ガスと同じように全戸で料金を統一している企業もあります。
このような企業のガス料金は、決して安くはありませんが少なくとも透明化していて不公平感がありません。
顧客としては、料金が高いか安いかは別として、安心して利用することができるでしょう。
料金の高い安いで思い悩むのが面倒な方は、全戸統一料金を採用しているガス会社と契約することをお勧めいたします。

「料金の使い分け」に関しては、事業者側としてはそうせざるを得ない事情があるのも理解できます。

しかし顧客側としては、「他の家と同じようにガスを使っているのに料金が違う」状態は、不透明(理不尽)と言わざるを得ません。

実際に近年では、行政からのテコ入れが行われる段階にまで進んでいます。今後、LPガス料金がどのような体系になっていくのかは、行政の差配によって左右されるでしょう。

標準料金は意味があるのか?

プロパンガス会社の標準料金は、あくまでも目安であり、適用されるとは限らない金額です。

果たして標準料金をホームページ上で掲載する意味はあるのでしょうか?

標準料金を掲載する意味はあるのか?
これから引越しする方、特に集合住宅に転居予定でガス会社を選べない方にとっては、目安となる料金プランが記載されることは、一定の判断材料になり得るでしょう。
ただ上述しているように戸建てにお住まいの方で切り替えを考えている方にとっては、標準料金が目安になるとは考えづらく、あまり意味を成さないと捉えられます。

例えば都市ガスの場合には、ホームページ上で公開されている料金プランが全顧客に共通して適用されます。料金プランを掲載することは、透明性を高めるという点でとても意味があることだといえるでしょう。

プロパンガスの場合、「適用しないかもしれない金額」を公開しても意味がないという意見もあります。

プロパンガスに馴染みがない方は、都市ガスと同じように「標準料金(掲載されている料金)=適用される料金」と認識してしまうので、誤解を生む元になっているとも考えられるのです。

標準料金を掲載していない・わかりづらい

LPガス事業者のホームページを見ると、標準料金を掲載していないことが未だにあります。

標準料金を掲載してない・見つけづらい
ある程度の規模を持つ事業者は概ね掲載していますが、特定の自治体のみで供給するような小規模事業者では、標準料金が書いていないことも多々あるのです。
また掲載している事業者でも、標準料金のページを見つけづらいことも少なくありません。

一般的にLPガス事業者は、複数の料金プランがあるので、具体的な金額を他社や顧客に見せたくないという考えが働いています。

「ホームページを持っていないガス会社」や「標準料金が記載されていないガス会社」の標準料金を知りたい方は、直接営業所に行くか電話などで聞いてみましょう。

上記の取引適正化指針で「ホームページ上の掲載が難しい場合には、店頭の見えやすい場所に掲示するなどの方法により行う」との記載があるので、直接問い合わせれば具体的な金額を教えてくれるはずです。