ニチガス増配の見通し日本瓦斯(ニチガス)は2018年3月期の株主配当を4円増配する見通しです。一方で営業利益は、前期よりも14%減の105億円となる見込みです。減益と増配の見通しということで、対称的なことを実施することになりそうですが、これには主力のLPガス事業と、4月から新たにはじまった都市ガス事業が関係しています。

都市ガス事業 参入費用がかさむ

2017年4月から都市ガスが自由化され、ニチガスとしても念願であった都市ガス事業に参入しています。
テレビコマーシャルをはじめとして、新たな顧客獲得を目的として、かなりの費用を先行投資しています。都市ガス事業では2020年3月期までに顧客数を50万件にまで伸ばし、同事業単体でも黒字転換することを狙いとしています。同事業は今期、25億円程度の営業損益となる見込みで、そのため企業全体でも営業減益となる見込みとなっています。

プロパンガス事業は堅調の見通し

一方で主力であるLPガス事業では、4%程の増益となる見通しで、今期も顧客数を伸ばすことができるという予想です。企業全体としては良好な見通しであると言うことができるでしょう。そのため、減益ではあるものの、配当を増やすという見込みになっています。

東京ガスとの対立構図

ニチガスグループは、都市ガスの原料である液化天然ガス(LNG)を調達するため、東京電力系列の東京電力エナジーパートナーと提携しています。ガスというとガス会社のみを思い浮かべがちですが、電力会社もガス事業を手掛けており、LNGの輸入も行っています。
国内で最多の都市ガス顧客数を持つ東京ガスも、当然ながらLNGの輸入を行っていますが、ニチガスが東京電力系列と提携すると決めたことにより、両大企業が対立するという構図となりました。

しかしこれはニチガスの立場からすると、当然のことだと考えられます。都市ガス事業に参入するとなった時に、最も効率が良く採算を見込むことができる方法は、東京ガスユーザーをターゲットにすることでしょう。東京圏内は人口密度が高く、都市ガスユーザーが密集しているため、営業活動も効率的に行うことができます。
「東京ガスの牙城を崩す」ことを目標として設定するのであれば、提携先は東京ガスではなくなるのは当然でしょう。

一方で東京ガス側も都市ガス事業だけでなく、LPガス事業にも注力していく構えです。都市ガスでは日本一の顧客数を誇っていますが、LPガスではニチガスが圧倒している状況です。
そのため東京ガスでは、他のLPガス事業者と提携する動きを見せており、顧客数を増やしニチガスに対抗していく構えを見せています。
今後、プロパンガス、都市ガス、電力の勢力図がどのように変わっていくのか、この数年がポイントになるでしょう。